ダークユーモア・下ネタ・暴力・ナンセンスを武器に人気と批判を同時に得た狂気の子供向けカートゥーン!!
何かと過激な作風が多いイメージなアメリカのカートゥーン!
そんなイメージをより強固なものにしたカートゥーンこそ今回紹介する
『レンとスティンピー』
このカートゥーンが90年代初頭に登場したことで、後のカートゥーン作品はより大人向きに・より下品になっていった!
というのもカートゥーンそのものは従来『あくまで子供向けのもの』という認識が根強く、そのうえ子供が見るものだからより倫理や道徳の正当性が求められていた。
だが1991年に彗星のごとく、あの全米を代表する教育チャンネル『ニコロデオン』で『レンとスティンピー』の放送が開始された!
『レンとスティンピー』の登場は衝撃的であり、子供はおろか大学生・専門家たちから高い評価を得て、良識派の大人たちに忌み嫌われた!
一体どんな内容アニメなのか?
概要から紹介していきます!
概要
基本1話完結のコメディカートゥーン!
感情が不安定で気性の荒いチワワのレン!
マヌケでボンクラなネコ、スティンピー!
凸凹コンビが繰り広げるスラップスティック風ブラックコメディ!!
1991年に天下の教育チャンネル『ニコロデオン』で放送開始!
類稀なる下品さと不条理すぎるユーモアで子供たちから圧倒的な支持を得た一方で、良識派の大人たちからのクレームが半端なかった!
またニコロデオン側もある程度は『レンとスティンピー』の下品さを許容していたものの、度を過ぎる表現に対しては検閲をするようになった。
例えば
- ローマ教皇を出演させる。→ 帽子の十字架を消して「ただの長い帽子の人」にする
- 米国憲法と権利章典を燃やす。→ シーン丸ごと削除
原作者兼総監督のジョン・クリクファルシはこれら検閲に不満を示し、シーズン3の途中で降板!
その後は別人が監督をするがシーズン5でシリーズが終了してしまう。
だが1991年~1996年の5年間でその後のカートゥーン業界に大きな影響をもたらしたのだ!!
本作品の魅力
40年代カートゥーン黄金期の持ち味をリバイバル!!
原作者ジョン・クリクファルシが目指していたこと。
それは40年代カートゥーン黄金期のハンナ・バーベラ(トムとジェリーなど)やルーニーチューンズのようなキャラクターの感情や動きが力強く描かれているアニメをつくること。
60年代以降のカートゥーンは動きではなくセリフで笑いを取る手法がメインになっていたため、この試みはとても新鮮なものであった!
また制作スタイルも昔ながらのオールドスタイルを採用!
今では作画・音響・脚本など作業にそれぞれの監督がつくが、ジョン・クリクファルシはすべての部門の監督を務め、さらに主人公のレンの声優も務めていた!
時代の流れに逆らう奇抜さが視聴者の心を掴んだのかもしれない。
カートゥーンをより大人向きに!
『レンとスティンピー』の凄さは子供人気だけでなく、大学生や若者・大人の支持を得ていたこと!
「カートゥーン = 子供向き」というのが一般的な認識であったこの時代において、大人たちからの支持はとても珍しいことであった。
よって『レンとスティンピー』のヒットによって、大人向きのコメディカートゥーンが作られるようになったのだ。
今後おそらく超えるものがいないほどの狂気のユーモア
『サウスパーク』・『リックアンドモーティ』・『スポンジボブ』・『おっはよー!アンクルグランパ』などカートゥーンはイカれた作品が盛りだくさん!!
だがだれも敵わない!
この『レンとスティンピー』には!!
何一つ理解が出来るシーンがない...
度の超えたコメディはもはやホラー...
それを体現している。
僕が初めて見た『レンとスティンピー』のエピソード「Ren Needs Help」を紹介してそのヤバさを伝えたい。
大昔にみた話なのにまだ頭に焼き付いて離れない...
「Ren Needs Help」
物語冒頭、レンは剝製になったヘラジカのソファーにずっと話しかけているところから始まる。
そこにスティンピーがやってくるが、レンの異常さに全く気付かなかった。
そしてスティンピーは室内でゴルフを始めるが、そのときレンが大切にしていたガラスのテーブルを粉々にしてしまう!
レンはその現場を目のあたりにし、怒りに震えながらスティンピーに近づいていく。
スティンピーはただ必死に謝るだけ。
今にも怒りが爆発しそうなレンであったが、突然ケロッとして一言・・・
レン「じゃあ、僕は、これで、天国にいってきま~す!」
?????????????!!!!
レンは台所に向かい、なんと生ごみ粉砕機の中に入ろうとした!
必死に止めるスティンピーだが、レンはもう生ごみ粉砕機に入ってしまった!
スティンピーはここでレンの異常性に気づき、病院に連絡!
レンは精神病院に入れられてしまう!!
そこには意地悪な魚、陰謀論を信じる消防士、『チーズ』という言葉を聞くと発狂しておろし器で尻をそぎ落とそうとする牛。
見るからにヤバい奴ら。
だがグループセラピーにてレンは「同居人のスティンピーがムカつくから、ときどき奴をひっぱたく!」と語ると上記の3人はなぜかドン引き。
ここのシーンの意味は分からないが、おそらくレン以外はただイカれたフリをしていた連中だったのだろう。
当初は病院暮らしを楽しんでいたレンだが、後に発狂!!
他の患者たちを率いて病院を荒らしまくるが、スタッフに捕縛されて手術を受けさせられる。
手術を受けさせられたレンはスーツに着替えさせられて、ニュースのスタジオに連れていかされる。
そしてレンはカメラを目の前にしてこう語った。
レン「全国民に告ぐ!5分後に爆撃開始だ!」
そして物語が終わる...
・・・
こんなの放送していいのか・・・?
しかし後にネットの書き込みでもっと恐ろしいことが判明した...
なんとこの「Ren Needs Help」というエピソード...
『レンとスティンピー』では比較的マシなエピソードらしい!!?
このカートゥーン、そこが知れない...
影響を与えた作品たち
ビーバス&バットヘッド
『ビーバス&バットヘッド』はミュージックビデオを流すことで有名なケーブルチャンネル”MTV”で1993年から放送されたアニメ。
オタクでもなければ陽キャでもない悪ガキビーバスとバットヘッドの2人が繰り広げるコメディカートゥーン。
メインエピソードの合間にミュージシャンのPVが挿入され、PVの内容を誉めたり面白くないと一蹴する毒舌スタイルで人気を博した。
原作者マイク・ジャッジは『レンとスティンピー』が若者人気を博したことがきっかけで、”MTV”が『ビーバス&バットヘッド』を放送することに意欲的になったことを公言している。
スポンジ・ボブ
世界的人気を誇るカートゥーン、『スポンジボブ』!!
このカートゥーンも『レンとスティンピー』と同じくニコロデオンで放送されている。
実は『スポンジボブ』の制作スタッフは元『レンとスティンピー』に携わっていた人が多く、作風がかなり似ている。
『レンとスティンピー』の脚本を担当していたヴィンセント・ウォーラーは、『スポンジボブ』の脚本・ディレクターでもある。
まさに『スポンジボブ』は『レンとスティンピー』の弟子的作品とも言える。
サウスパークとの確執
『レンとスティンピー』と同じく過激なカートゥーンの一つに挙げられる『サウスパーク』。
しかしこの2作品の原作者には確執があるのだ。
盗作論争!いい大人同士が”ウンコ”を巡って大喧嘩!?
『レンとスティンピー』の原作者ジョン・クリクファルシが「『サウスパーク』が俺のアイディアをパクった!」と主張。
そのアイディアとは『サウスパーク』に出てくるウンコの妖精”Mr.ハンキー”のことだった。
『サウスパーク』が放送される前にジョン・クリクファルシはサウスパークの放送会社コメディセントラルに「ナッティ・ザ・フレンドリー・ダンプ」というアニメシリーズの企画を持ち込んでいた。
「ナッティ・ザ・フレンドリー・ダンプ」はウンコが喋ったり歌ったり踊ったりするアニメだったが、当時のコメディセントラル側は企画を一蹴した。
ジョン・クリクファルシは”Mr.ハンキー”はこの企画をパクっていると主張。
一方『サウスパーク』の原作者トレイ・パーカーはこれを否定。
『サウスパーク』が放送される前に「ナッティ・ザ・フレンドリー・ダンプ」の企画が持ち込まれていたことは事実であるが、トレイ・パーカーはこの企画の存在すら知らなかった。
そのためトレイは「バカげている」と一蹴した。
トレイは『レンとスティンピー』にも否定的!?
またトレイは2000年6月1日発売の雑誌「プレイボーイ」にて、『レンとスティンピー』についてコメントした。
トレイは『レンとスティンピー』のことを「エピソードの半分以上を見たことはないが、キャラクターのリアクションが大げさすぎて、声も煩わしいので、全く楽しめなかった」とコメント。
個人的にこの批評は意外であった。
トレイは奇抜な作品なら何でも好きであると思っていたが、実際はそうではないことにびっくりした。
しかしよく考えるとトレイの笑いのルーツは『モンティパイソン』。
知的でナンセンスなジョークを好む。
一方『レンとスティンピー』は野生的なエネルギッシュさ不条理ギャグを連発するスタイル。
似て非なるものであった。
もうすぐ視聴可能?!
現在『レンとスティンピー』は日本語吹き替え・日本語字幕で視聴することはできない。
昔はニコロデオンで日本語版を何本か放送していたが...
しかし今年2021年3月に新たなストリーミング配信サービス『Paramount +』が欧米諸国で開始されている。(※日本ではまだはサービスが始まっていない)
『Paramount +』では『レンとスティンピー』のエピソードが37話分配信されている。
もし『Paramount +』のサービスが日本でも開始されたら視聴できるかも?
また2020年に『レンとスティンピー』の新作がコメディセントラルにて製作されることが発表されている!
しかしコロナが影響し公開は延期されている...待ちきれない!!
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