なぜこんな映画を企画段階でボツにしなかったのか・・・?
どんなに人からくだらないと蔑まれても、自分を信じ信念を貫けば奇跡が起こる!
そんなフィクションのような出来事がこのZ級映画『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』を通じて生まれるのであった。
頭の中で「トマトが突然自我を持って人間を襲い掛かってきたらどうしよう?」なんてくだらない妄想をしてしまう人は結構いるかもしれない。(やっぱいないか・・・)
しかしこのくだらない妄想から「よし!いろんな人から出資してもらってトマトが人を襲う映画を作って大儲けだ!」と考えるのは世界でたった3人...
『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』の監督・製作・脚本を共同で務めた
- ジョン・デ・ベロ
- コスタ・ディロン
- J・スティーヴン・ピース
の3人だけだ。
いや妄想だけでとどめておけよ!!
1~2分のショートフィルムであっても誰も見なさそうな内容を彼ら3人は87分の長編映画として製作!
正気の沙汰でない...
しかし彼らが常軌を逸していたからこそ『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』は様々な奇跡を呼んだ。
まさに神様のいたずらって感じ。
でも奇跡と言っても、不慮の事故、数々の名優・ミュージシャンの黒歴史を製造、さらなるダメ映画の製作幇助である。
まずはあらすじから紹介して、そのあとこの映画が起こした奇跡を紹介したいと思う。
あらすじ
ネタバレ注意!!(あらすじと言いつつもう全部ストーリーを教えます。)
※正直こんな映画を紹介しても見る人なんてほとんどいないに決まっている。だからここでストーリーを全部行ってしまった方が逆に親切だと考えた。それでもネタバレを避けたいという異常者はここを読み飛ばしてください。
アメリカのとある町。
一人の主婦が自宅で血まみれの変死体となって発見された。
だが警察はそれが血ではなくトマトジュースだと気付く。
やがてアメリカ各地でトマトによる襲撃事件が続発し、政府管理の農場にあったトマトまでもが人々を襲うようになった!!
これらの事態に対してアメリカ政府も本腰を入れて対策に乗り出す。
政府は対トマト特殊捜査チームを結成!!
リーダーには無名の刑事、ディクソン。
スキューバダイビングの達人、グレック。
元オリンピック水泳選手、グレタ。
変装の達人、サム・スミス。
パラシュートを背負い、日本刀を振り回すフィンレター大尉などおかしな奴ばかり...
順調にトマト退治が行われているところ、ピンチが訪れる!
なんと直径2メートルは超える巨大トマトが出現し始めたのだ!!
巨大トマトによって対トマト特殊捜査チームのほとんどが倒されてしまう...
だがディクソンは偶然にも彼らの弱点を発見する!
それはかなり音痴なヒットソング『Puberty Love(思春期の恋)』をトマトに聞かせると、トマトたちは縮小化するのだ!
だがトマトたちも対抗して巨大耳栓をつけて人々に襲い掛かる!!
最終的にディクソンがスタジアムに巨大トマトたちをおびき寄せて大音量の『Puberty Love(思春期の恋)』を聞かせたことで事態は収拾した...
しかし今度は自我を持ったニンジンたちが土から出てきたのであった・・・
(「もう勝手にどうぞ」って感じ・・・)
数々の奇跡たち
撮影中にまさかのヘリコプター墜落事故に遭遇!?
まずこの映画の予算が8万ドル~10万ドルであると言われている。(ソースによって変わる。)
この予算のうち6万ドルは映画で使うヘリコプターのレンタル料に充てられた。
当初はこのヘリコプターが着陸するシーンを撮影する予定であったが、撮影中にヘリコプターのテールローターが地面に接触したため操作不能となった!
そしてヘリコプターは地面に激突し大破してしまう!!
幸い操縦士にケガはなかったが、製作チームは「不本意ではあるが凄いシーンが撮れた!」と喜び無理やり映画にこのシーンをねじ込んだ!
さらに「この事故で操縦士が亡くなった」をウソをついて宣伝に利用したのだ。
ずる賢いというべきか、商才があるというべきか...?
続編にあのジョージ・クルーニーが出演!!?
なんとこの映画は続編が3つも作られている!
以下の作品がこの映画の続編である。
- 『リターン・オブ・ザ・キラートマト』(1988年)
- 『キラートマト 決戦は金曜日』(1990年)
- 『キラー・トマト/赤いトマトソースの伝説 』(1991年)
夢(悪夢)のように思えるが、残念ながら現実である。
しかしこの2作目の『リターン・オブ・ザ・キラートマト』に若かりし頃のある大物俳優が出演していた。
その名もジョージ・クルーニー
ジョージ・クルーニーは主人公の相棒役というメインキャストで出演し、ともにキラートマト相手に戦った!
俳優・女優なんて新人時代はB級ホラー映画に出演することは珍しくない。
しかしZ級映画に出ているのはジョージ・クルーニーくらいなものだと思う。
でもジョージ・クルーニーは無名時代の『サウスパーク』に注目していたり、ロバート・ロドリゲスやクエンティン・タランティーノと仲が良かったりなどキワモノ系が大好きなのだろう。
そのためおそらくジョージ・クルーニーはこの『リターン・オブ・ザ・キラートマト』に出演したことを後悔していないはずだ...
映画音楽を担当したスタッフから2人もグラミー賞受賞者を輩出!?
芸術の世界において「後に歴史に名を遺す人たちが偶然居合わせる出来事」があったりする。
例を一つ出すとすれば「セックスピストルズが1976年6月4日に行ったマンチェスターのレッサーフリートレードホールでのライブ」であろう。
当時まだ無名のセックスピストルズのライブに約40人ほどの客が集まった。
その曲の中には後のロック音楽に多大な影響を与えるミュージシャンがたくさんいた!
- イアン・カーティス(Joy Division)
- バーナード・サムナー(Joy Division / New Order)
- ピーター・フック(Joy Division / New Order)
- モリッシー(The Smiths)
- マーク・E・スミス(The Fall)
- ピート・シェリー(Buzzcocks)
- ハワード・ディホート(Buzzcocks)
- ジョン・クーパー・クラーク
どれも大物ばかり!!
『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』もこれには及ばないが、凄いミュージシャンたちを輩出しているのだ!
マット・キャメロン
マット・キャメロンはSound Garden, Pearl Jamのドラマーとして活躍し、2つのバンドでグラミー賞を受賞・ノミネートしている。
そんな彼がどのように『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』に参加していたのか?
作中に登場するトマトたちを弱体化させる音痴ソング『Puberty Love(思春期の恋)』
これを歌っていたのがマット・キャメロン!!
ちなみに当時彼は「Foo Cameron」というペンネームを使用している。
ゴードン・グッドウィン
ゴードン・グッドウィンは『アタック・オブ・ザ・キラー・トマト』の映画音楽を担当していた。
彼はピアニスト、サックス奏者、作曲家、編曲家、指揮者であり、ジャズバンド”Gordon Goodwin’s Big Phat Band”のリーダーである。
彼は後にグラミー賞の最優秀インストルメンタルアレンジメント部門を3回受賞し、ベストラージジャズアンサンブルアルバム部門も受賞している。
ノミネートも含めると彼は20以上のグラミー賞にノミネートされてる。
また彼は『アニマニアックス』や『ヒストリー』などのアニメ音楽も担当しており、デイタイムエミー賞も受賞している。
かなり優秀な音楽家なのだ。
彼はこの映画に関わったことを今どう思っているのだろうか・・・?
あのティム・バートン監督に影響を与えた!?
ティム・バートン監督作品に『マーズ・アタック』(1993年)というのがある。
火星人がとある勘違いによって地球人を滅ぼそうとしてしまうSFコメディ映画。
- ジャック・ニコルソン
- ダニー・デヴィート
- ナタリー・ポートマン
- サラ・ジェシカ・パーカー
- マイケル・J・フォックス
- ジャック・ブラック
- トム・ジョーンズ
など豪華キャストが集まったにも関わらず、批評家から最低な評価を受けた作品...
この映画の終盤、火星人はスリム・ホイットマンが歌う『Indian Love Call』を聞くと頭が爆発して死んでしまうのだが、これは『アタック・オブ・ザ・キラートマト』のパロディであることが公言されている。
元々ティム・バートン監督はエドウッド作品などのキワモノが好きなので、『アタック・オブ・ザ・キラートマト』のパロディをしたのだろうけどほとんどの人は気づかないし嬉しくないだろう。
視聴するには?
現在
U-Next
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またDVD・BDも発売中。
誰が買うんだ!?
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