パンクを詩的に解釈してパーソナルな心情を吐露するように歌った未だ影響力を持つエモバンド!!
数年前に当ブログでエモという音楽ジャンルを説明するのにSunny Day Real Estateというエモ史に残る重要バンドについて紹介した。
そのバンドと双璧をなすエモバンドが今回紹介するJawbreaker(ジョーブレイカー)だ。
Jawbreakerはギター/ボーカルのブレイク、ベースのクリス、ドラムのアダムによる3ピースバンドで3人とも名門ニューヨーク大学出身。
1986年にベースのクリスが大学内でバンド募集の張り紙を貼り、その張り紙を見たブレイクとアダムが応募したのがバンドの始まりであった。
Sunny Day Real Estateが1992年結成で1994年にレコードレビューしたのに対して、Jawbreakerは1986年結成で1990年にレコードレビューと少し先輩だ。
Jawbreakerの影響力は凄まじく、その理由の一つとしてギター/ボーカルのブレイクのカリスマ性と当時の白人男性の心に刺さる私的な苦悩を描いた作詞で『エモのゴッドファーザーのうちの一人』として称えられている。
しかしJawbreakerは1994年にメジャーデビューして1996年に解散...その後2017年に待望の再結成を果たしたが、彼らは同業者からの評価の高さに比べて、なぜ世間に受け入れられなかったのか?
その理由は彼らのメジャーデビューにあった...
インディーズからメジャーに行くまでの罠
Jawbreakerは1993年までインディーズで活動をしており、そのときには熱烈なファンコミュニティを形成していた。
そして1993年10月にJawbreakerは大人気バンドNirvanaの前座に抜擢される。
通常Nirvanaの前座は大変名誉なことでありチャンスでもあるが、既に熱烈なファンコミュニティがいるJawbreakerにとって悪手であり、熱烈なファンは「Jawbreakerは大衆に媚びだした!」と批判した。
そもそもNirvanaやR.E.M.などのオルタナティブロック勢がメジャーデビューした1990~1991年の頃は、彼らがメジャーデビューすることに対して「本当に上手くいくのか?」と疑問に思われることの方が一般的であった。
だがNirvanaやR.E.M.、Pearl Jamなどが大成功したために、それ以降は『オルタナティブロックバンドがメジャーデビュー=商業路線に媚びた』というイメージが強固となり、Jawbreakerを苦しめることとなった。
更に1994年2月にJawbreakerはNirvanaが所属するDGCレコードと契約してメジャーデビューを果たしたため、彼らのファンはJawbreakerに対して嫌がらせとも呼べる抗議活動を行った。
彼らのファンはJawbreakerに対する誹謗中傷の手紙を大量に送りつけたり、Jawbreakerのライブでメジャーデビュー以降にリリースした曲を演奏すると背を向けて座り込むなどをした。
しかしJawbreakerの熱烈なファンはなぜこれほどメジャーデビューしたことを恨むのだろう?
まるで広島カープの新井貴浩のFA移籍騒動みたいな裏切りっぷり!?
皆さんは現広島カープ監督の新井貴浩監督が現役時代に起こしたFA移籍騒動を知っているだろうか?
新井選手はホームラン王にもなったこともあるような強打者で広島の若きスラッガーとして活躍していたが、当時の広島カープのスター級の選手がFA権という制度を利用してより待遇の良いチームに移ることがよくあった。
新井選手もファンから「FA権で他のチームに行くのでは?」と噂されていたが、その不安を払拭するため2006年に新井選手は『生涯カープ宣言』をしてファンを安心させた。
しかし翌年2007年オフ、新井選手はFA権を行使して阪神タイガースに移籍することを発表!
当然彼はその後カープの本拠地であるマツダスタジアムで試合をするたびにヤジが飛ぶような圧倒的嫌われっぷりをみせる。
Jawbreakerも新井選手と同じようなことをしたのだ。
彼らはNirvanaとツアーをしたことでファンから「Jawbreakerはメジャーデビューするに違いない」という噂が回るようになったが、Jawbreakerはライブをするたびこの噂を否定した。
だがJawbreakerは噂通り、DGCレコードと契約してメジャーデビューをした。
このような経緯があるためファンが「裏切れた」と怒るのも多少は納得できる。
またJawbreakerの曲は弱い立場にいる白人男性に寄り添った内容のものが多く、ファンはJawbreakerを『弱い立場にいる自分たちの味方』として支持していたのだろう。
そんなJawbreakerのメジャーデビューは他のバンドのメジャーデビューとは比べ物にならない裏切り行為のように感じられたのかもしれない。
バンドの性質・時代の流れ・ファンのニーズの3つの要素が上手くかみ合わずメジャーデビューしたことで彼らは過小評価されてしまっていると思う。
この当時の詳細を深く知るには彼らのドキュメンタリー映画『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』を視聴しよう!
メンバー
ブレイク・シュワルツェンバッハ
ギター/ボーカル。
ブレイクは当時の白人男性の心に刺さる私的な苦悩を描いた作詞センスから、The Smithsのモリッシーのようなカルト的人気を誇った。
Jawbreaker解散後に1997年にJets to Brazil(ジェッツ・トゥ・ブラジル)を結成し、エモ界隈で有名なバンドとなった。
しかしJets to Brazilも2003年に解散、その後もThe Thorns of Life(ザ・ソーンズ・オブ・ライフ)やForgetters(フォーゲッターズ)というバンドを結成するがいずれも解散。
またバンド活動の傍らで、ニューヨーク市立のハンター大学で英語学科の非常勤講師として働いている。
2017年にJawbreakerを再結成し、現在も新たなアルバム制作に向けて活動している。
クリス・バウアーマイスター
ベーシスト。
他のメンバーが感覚派であるのに対して、彼は理論派であり対位旋律・ベースコードを多用して複雑なサウンドを追求した。
また音楽趣味もブレイクとアダムがSSTレコード系のバンドを好んでいたのに対して、彼は全くそれらバンドの良さがわからないと言った。
ただ彼がニューヨーク大学時代にバンド募集した張り紙には、「Husker Du、Sonic Youthに影響を受けている」とSSTレコード出身のバンドが含まれていた。
ブレイクとはバンドのことで衝突が多く、ブレイクとの喧嘩で1996年にバンドを解散している。
ただドキュメンタリー映画『ジョウブレイカー/ドント・ブレイク・ダウン』のインタビューでは、「ただブレイクがアーティストとして飛躍している様子を間近で見て嫉妬していたかもしれない」と振り返っており、それが衝突の原因になったかもしれないと語った。
バンド解散後クリスはおもちゃ屋の店員として働いていた。
アダム・ファラー
ドラマー。
ブレイクとは同じ高校(カリフォルニア州サンタモニカ・クロスローズ・スクール)に通っており、2人でレッド・ハーヴェストというバンドを結成していた。
バンドの中では中立の立場におり、解散に対しても最後まで反対していた。
解散後アダムはJawbreakerのツアーマネージャーのクリスティと共にビデオショップの経営をしていた。
次のページからおすすめ曲・アルバムを紹介!!
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