おすすめ曲
Viet Nam
『Double Nickels on the Dime』(3rdアルバム/1984年)、収録曲。
曲名通りベトナム戦争について歌った曲。
歌詞で50万という数字とその10パーセントの5万という数字が出てくるが、この50万は北ベトナム兵の戦死者数であり、その10パーセントの5万はアメリカ兵の戦死者数だと言われている。
淡々と数字を語ることで反戦を表現している曲。
Corona
『Double Nickels on the Dime』(3rdアルバム/1984年)、収録曲。
『Corona(コロナ)』と聞いて、今では感染症の方を想像してしまうが、この曲はコロナビールというメキシコのビールの銘柄についての楽曲である。
能天気なポルカのようなビートをアップテンポで奏でて、消費社会や過剰広告について抗議した楽曲。
90年代で全米で人気と社会問題を巻き起こしたテレビ番組『ジャッカス』のテーマソングにもなっている。
This Ain’t No Picnic
『Double Nickels on the Dime』(3rdアルバム/1984年)、収録曲。
バンドを代表する名曲であり、アメリカンドリームとは裏腹に過酷な生活を送る現状について歌っている曲。
アメリカでは土地によっては日雇い労働者が作業場の近くにテントを張って生活している人もいるため、富裕層に対して彼らのような生活は『ピクニックではない!』と訴える内容となっている。
また2000年にこの曲のタイトルを元にした音楽フェス『This Ain’t No Picnic』が開催されており、Sonic Youth・Sunny Day Real Estate・The Get Up Kids・Built to Spill・Guided By Voicesなどの個人的に大好きなバンドばかりが出演していたフェスだった。
この音楽フェス『This Ain’t No Picnic』は2002年まで開催されていたが、近くで開催されていた大型フェス『コーチェラ・フェスティバル』の勢いにより2003年に幕を閉じた。
しかし2022年に再び音楽フェス『This Ain’t No Picnic』が開催されている。
King Of The Hill
コンピレーションアルバム『Project Mersh』(1985年)、収録曲。
この曲はアメリカ社会の個人崇拝主義や権力の一極化について批判した曲。
短調であるがフックのかかったベースラインや攻撃的なギターリフなどが相まって比較的キャッチーな曲となっている。
バンドとしては珍しくこの楽曲はMVが制作されている。
更にゲストボーカルとしてBlack Flagのヘンリー・ロリンズが参加している。
I Felt Like a Gringo
4thEP『Buzz or Howl Under the Influence of Heat』、収録曲。
D・ブーンがメキシコに旅行に行ったときの思い出を自伝的に表現した曲。
とにかく演奏スキルの高さを感じずにはいられない楽曲!
高速ファンキーハードコアって感じでバンドの中でもかなりのアグレッシブさを誇り、ギタリストなら今すぐコピーしたいと思ってしまう。
Little Man with a Gun in His Hand
4thEP『Buzz or Howl Under the Influence of Heat』、収録曲。
ミニマルな楽曲が多いMinutemenの中でも異色な複雑な構成の曲。
歌詞は銃社会批判の曲であり、銃を持つこと愛や強い精神を得られないことを短い歌詞の中で伝えている。
スポークンワードがあったり、途中でトランペットソロがあったり、ジャズとパンクロックを組み合わせたような楽曲。
しかし後半になるにつれて怒りが混みあがるように盛り上がっていく様は圧巻だ!
おすすめアルバム
『Buzz or Howl Under the Influence of Heat』(4thEP/1983年)
従来のハードコアパンクとは一線を画した彼らのスタイルを世にアピールした傑作EP!
『Buzz or Howl Under the Influence of Heat』は8曲収録されており、総曲時間が15分30秒というEP。
このEPの制作費はたったの50ドル程度であり、録音方式も16トラック録音から4トラック録音に変更して従来よりローファイな録音環境であった。
ただこの録音方式はプロデューサーのスポットによる提案であり、ライブバンドとしての彼らの良さを引き出す録音方法としてこのようなスタイルを採用した。
また曲に関しても今まで以上にハードコア・パンクとは一線を画すスタイルであり、かなり実験的な要素を詰め込んでいる。
この作品は業界内での評価が高く、Wilco(ウィルコ)のジェフ・トゥイーディは20代の時に多大な影響を受けた作品としてこの『Buzz or Howl Under the Influence of Heat』を挙げている。
またスティーブ・アルビニが選ぶ『死ぬ前に聞きたいレコード101』の中で第19位にランクインされている。
『Double Nickels on the Dime』(3rdアルバム/1984年)
破裂しそうなほどバンドのアイディアを詰め込んだポストハードコアの大名盤!
このアルバムには楽曲が44曲も収録されおり、総曲時間は88分1秒。
これほどボリュームの多いアルバムになったのはMinutemenと同じレーベルのHüsker Dü(ハスカー・ドゥ)が名盤『Zen Arcade』(2ndアルバム/1984年)をリリースしたためである。
『Zen Arcade』は全曲23曲であり「惨めで虐待的な家庭から逃げる青年の物語」というコンセプトアルバム。
Minutemenはこのアルバムに刺激を受けて楽曲が44曲も収録された『Double Nickels on the Dime』を制作した。
当時はLP2枚組で発売され、1枚目の表が「サイドD」(D・ブーンが主に作った曲たち)、1枚目の裏が「サイドマイク」(マイク・ワットが主に作った曲たち)、2枚目の表が「サイドジョージ」(ジョージ・ハーレーが主に作った曲たち)、2枚目の裏が「サイドチャフ」(その他の曲たち)というコンセプトで収録された。
※このコンセプトはピンク・フロイドのアルバム『ウマグマ』のオマージュである。
基本的に彼らの2分以内のミニマルでタイトな曲という方式は変わらないが、断片的にジャズを入れたりフォーク・カントリー・スポークンワードを入れたりして好奇心の限りを尽くしている。
また急遽収録曲を増やすという計画になったため(元々は20曲ほど収録する予定だった)、同じレーベルのメンバーに作曲を手伝ってもらったりカバー曲を入れたりなどもしている。
無秩序のようで過激でなければならないというハードコア・パンクのある種の秩序を、Minutemenの淡々とした曲群が破壊した事実は目からうろこであり爽快な気分も感じる。
ローリング・ストーン誌のThe 500 Greatest Albums of All Time(2020年改訂版)では第267位にランクインした。
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