アメリカンポップスの最重要ロックバンド
正直The Beach Boys(ビーチボーイズ)の紹介を書くのは恐れ多い!
「今までのバンドはそうではないか?」と聞かれれば、もちろん全部恐れ多い。
でもビーチボーイズは今まで紹介したバンドの中でもかなり大御所であり、アメリカのポップミュージックにおいて最も影響力の大きいバンドの一つ。
ビーチボーイズには2つ側面がある。
1つはアメリカ西海岸の若者文化(サーフィン、海、水着姿の女の子、改造車)を象徴したサーフィンロックをしていたこと。
もう一つはライブ中心の活動とは別にスタジオでの活動に尽力し、ロックアルバムの芸術作品として昇華させたこと。
正確に言えばライバルであったビートルズと切磋琢磨してアルバム制作を行った結果、ロックミュージックにおけるアルバム制作の手法が変わった。
ロックバンドにとってのアルバムというのはいわば、「ファンをライブハウスへ連れて行かせるためのもの」というライブ志向主義的な側面が強いため、楽曲内容もライブで出来る範囲でのものしか収録されなかった。
ビートルズの『ラバーソウル』とビーチボーイズの『ペットサウンズ』が出て以来、上記なようなアルバムの概念がひっくり返る!
彼らが出した名盤はアルバムを一つの芸術作品として捉え、ある一つのコンセプトをもとに楽曲を統一したり、通常のロックバンドが扱わないような楽器を使ったり、録音テープを加工することで特殊なサウンドを再現したりなど創意工夫がなされた。
この革命はロックの歴史にとってかなり重要なもので、ロックミュージックの格が上がった瞬間でもあった。
そんなロックの歴史を変えた重要なバンド、ビーチボーイズの紹介をします。
メンバー
※メンバーは創設メンバーのみ。
ブライアン・ジョンソン
バンドのリーダーにしてボーカルとベース、キーボードを担当。
またウィルソン兄弟の長男(次男がデニス、三男がカール)
バンドの楽曲の作曲はほとんど彼が手掛けている。
類まれなる作詞作曲能力、編曲能力、サウンドプロデュース能力などあらゆる分野において突出した能力を持つ。
またロックバンドとして初めてセルフプロデュースでアルバムを制作したのもブライアン・ウィルソン。(通常バンドが外部からプロデューサーを雇うのが当たり前であり、今でもその手法が主流)
彼から影響を受けたミュージシャン・バンドは多すぎてきりがない。
一つ上げるならあのポール・マッカートニーが彼について「偉大なアメリカの天才の一人」と称した。
2008年にローリング・ストーン誌の選ぶ「歴史上最も偉大な100人のシンガー」にて第52位にランクインした。
また2015年にローリング・ストーン誌の選ぶ「歴史上最も偉大な100人のソングライター」にて第12位にランクインした。
マイク・ラブ
リードボーカリスト。
彼はブライアン・ウィルソンの従兄にあたる。(母親がウィルソン兄弟の父親の妹)
初期ビーチボーイズの楽曲の作詞はほとんど彼が手掛けている。
また1960年代後半ブライアン・ウィルソンが精神疾患によって活動不可能になったときにリーダーとしての役割を担った。
アル・ジャーディン
リズムギタリスト。
初期ではベースを担当しており、楽曲によってはボーカルをすることもある。
ブライアン・ウィルソンの高校・大学の同級生。
創設メンバーであるが1961年に彼は歯科医師になることを理由にバンドを脱退。
しかし彼の代わりに入ったデヴィッド・マークスは素行不良だったためバンドをクビになり、ブライアン・ウィルソンの父マレーに要請され1963年にバンドに復帰した。
デニス・ウィルソン
ドラマー、甘いルックスでファン人気が高い。
ウィルソン兄弟の次男。
またバンドのメンバーの中で唯一サーフィンが趣味である。(※ちなみにバンド名がビーチボーイズであるのにもかかわらず、デニス以外サーフィンをしない。)
またブライアン・ウィルソンが精神疾患で活動が出来ない間、デニスは何曲か作曲しており、その中でも『Forever』と『Little Bird』は名曲として名高い。
しかし1983年12月28日。
泥酔状態のデニスはロサンゼルスのマリーナ・デル・レイで友人の所有するヨット「エメラルド号」の甲板から海に飛び込み溺死してしまう。
享年39歳であった。
カール・ウィルソン
リードギタリスト。
ウィルソン兄弟の三男。
「天使の歌声」と称されるほどの美しい歌声の持ち主。
長年バンドを支え続けたが1998年に肺がんによりこの世を去る。
享年51歳であった。
Q誌の選ぶ「歴史上最も偉大な100人のシンガー」において第20位に選ばれた!
おすすめ曲
Surfin’ U.S.A.
2ndアルバム『Surfin’ U.S.A.』収録曲、シングルカット曲。
チャック・ベリーの楽曲「Sweet Little Sixteen」の替え歌として発売された楽曲であるため、作曲者のクレジットはチャック・ベリーとなっている。
朗らかでポップ、アップテンポなサーフィンミュージックの金字塔!
当時のビルボードホットチャート100で第3位にランクインされた。
Surfer Girl
3rdアルバム『Surfer Girl』収録曲、シングルカット曲。
ブライアン・ウィルソンが初めてセルフプロデュースした楽曲。
リード・ボーカルもブライアン・ウィルソンが担当。
彼の当時の恋人ジュディ・ボウルズに触発されて作った楽曲であり、夕日が浮かぶ穏やかな海を想起させるような曲。
当時のビルボードホットチャート100で第7位にランクインされた。
I Get Around
6thアルバム『All Summer Long』収録曲、シングルカット曲。
ブライアン・ウィルソンとマイク・ラブの合作楽曲。
ロックっぽさとハーモニーワークの融合が見事なポップソング!!
当時のビルボードホットチャート100で第1位にランクインされた。
Red Hot Chili Peppers Cover
Red Hot Chili Peppersが発表したEP『Rock & Roll Hall of Fame Covers EP』に収録されているカバー。
彼らにしてはオリジナルに忠実なカバーとなっている。
Melvins Cover
Melvinsによるカバーであり、2021年に発売された24thアルバム『Working with God』に収録されている。
しかし曲名が「I Fuck Around」となっており、本家がブチぎれないか心配だ・・・
California Girls
9thアルバム『Summer Days』収録曲、シングルカット曲。
ブライアン・ウィルソンとマイク・ラブの合作楽曲。
イントロのメロディが素晴らしく、ブライアン・ウィルソン自身も気に入っていることを公言している。
当時のビルボードホットチャート100で第3位にランクインされた。
またVan Halenのボーカリスト、デイヴィッド・リー・ロスがソロ作品でカバーしており、そちらも有名!
2010年にローリングストーン誌が発表した『史上最高の500曲』にて72位にランクインされた!
David Lee Roth Cover
Wouldn’t It Be Nice
11thアルバム『Pet Sounds』収録曲、シングルカット曲。
- ドラム
- ティンパニ
- グロッケン
- トランペットサックス
- アコーディオン
- ギター
- ピアノ
- アップライトベース
- 12弦マンドリン
等の様々な楽器を駆使して作成された名曲。
当時ロックバンドとしてかなり珍しいものであった。
大人同士のロマンチックな恋愛を抒情的かつ美しいメロディに乗せて歌った。
当時のビルボードホットチャート100で第8位にランクインされた。
2021年にローリングストーン誌が発表した『史上最高の500曲』にて297位にランクインした!
Good Vibrations
12thアルバム『Smiley Smile』収録曲、シングルカット曲。
ビーチボーイズを代表する楽曲!
本当は『Pet Sounds』に収録される予定であったが、ブライアン・ウィルソンの意向で収録されず本作から収録された。
ポップソングであるのだがサイケデリックかつプログレッシブロック的要素満載の曲。
同じ歌のフレーズを30回ほどオーバーダビング(同じフレーズを重ねて録音すること)してる箇所があり、その個所は美しく独特の響きを感じる。
またテルミン(手をかざすとフォア~ンって感じの音が鳴る楽器)と呼ばれる電子楽器を初めて効果的に使った楽曲ともよく評価されている。
当時のビルボードホットチャート100で第1位にランクインされた。
また2004年にローリングストーン誌が発表した『史上最高の500曲』にて6位にランクインされた!
Kokomo
12thアルバム『Smiley Smile』収録曲、シングルカット曲。
ブライアン・ウィルソンが一切関与していないのにもかかわらずヒットした曲。
作詞・作曲はマイク・ラブやママス&パパスのジョン・フィリップスが担当した。
当時のビルボードホットチャート100で第1位にランクインされた。
トム・クルーズ主演の映画『カクテル』の主題歌になっている。
またこの曲のミュージックビデオには人気ホームコメディドラマ『フルハウス』のジェシー役で有名なジョン・ステイモスが参加している。
おすすめアルバム
『All Summer Long』(6thアルバム/1964年)
イギリスからビートルズが襲来!衝撃を受けた彼らが負けじと発表した名盤!!
このアルバムからビーチボーイズはサーフィンロックミュージックから脱却し始めている。
またこのアルバムから楽曲のアレンジが複雑化していく。
アルバム収録の「I Get Around」は全米1位になった。
ティーン・セットという雑誌にて女優ペギー・リプトンは「ジョン・レノンとポール・マッカートニーがこのアルバム『All Summer Long』に夢中になっている」と語った。
USビルボードチャートで4位を記録。
『Pet Sounds』(11thアルバム/1966年)
ロック史上最大のポップアルバムとして輝き続ける歴史的名盤!!
先に言うと中級者向け!(でもビーチボーイズの凄さを説明するにはこの作品を語らざるを得ない。)
当時ライバルであるビートルズが『ラバーソウル』という芸術的に素晴らしい名盤を発表し、ブライアン・ウィルソンは強い衝撃を受ける。
ブライアン・ウィルソンはこの名盤に対抗するため、ライブツアーを全てキャンセルし新作のレコーディングに集中する。
またバンドメンバーではない腕利きのスタジオミュージシャンを雇いレコーディングを行ったため、実質ブライアン・ウィルソンのソロ作品とも言える。
サーフィンロック要素を全て捨てて、ブライアン自身の複雑な心情を表現した内向きな内容となっている。
またオルガンやハープシコード、フルート、テルミンなどのロックでは使うことない楽器から、自転車のベルや犬笛などの楽器とも言い難いものを使用した。
USビルボードチャートで10位を記録。
商業的にはあまり望んでいたような結果を得られず、ブライアンは意気消沈し精神状態がさらに悪化した。
しかし批評家たちや他のミュージシャンたちはこのアルバムを大絶賛。
何といってもビートルズのメンバーたちはこの『ペットサウンズ』を聴いて衝撃を受けた。(これがきっかけとなってビートルズはさらに実験色の強い『サージェントペパーズロンリーハーツクラブバンド』を制作した!)
ポール・マッカートニーも「このアルバムを聴かないと音楽的教育を受けたことにならない!」と評しているほど重要なアルバム。
ローリング・ストーン誌のThe 500 Greatest Albums of All Time(2020年改訂版)では2位にランクインした。
全ロックファン必聴の大名盤!!
コメント