サイケデリックロックの代表格、独自の音楽興行形態でアメリカ最高クラスの人気バンドとなったレジェンド!
またまたスモール・イン・ジャパンの代表格を紹介。
※スモール・イン・ジャパン・・・世界的に有名であるのに日本でのみあまり知られていないバンド
しかしこのGrateful Dead(グレイトフル・デッド)はサイケデリックロックバンド。
1965年に結成され、リーダーのジェリー・ガルシアが亡くなった1995年まで活動を続けていた。
ドラッグカルチャーのない日本において人気がないのは仕方がない部分もある。
それを考慮してもGrateful Deadはかなり売れている!!いや売れすぎている!!
興行成績で言うと90年代ではあのローリングストーンズに次ぐ世界2位のライブ興行収入を誇ったと言われている。
だが彼らには全米規模のヒット曲がない...
「ヒット曲がないのに売れるわけがない!」と思うのは自然なことだが、ヒット曲がなくともGrateful Deadは売れた!!
なぜか?
それは彼らのマーケティングの中にあった!!(※正直ロックバンドにマーケティングという言葉は合わないが、彼らの先進性あまりこのような言葉を使ってしまった。)
先見の明がありすぎるマーケティング
音楽が基本無料の商法!?
まず彼らはレコードやCDで儲けていない。
いや全世界で3,500万枚を超えるアルバムを売り上げてはいるが、そんなものは彼らの売上のほんの一部でしかない。
彼らはライブで儲けていた。
彼らは結成から解散までの間(1965~1995年まで)に延べ2,300回以上のライブを行った!(1年で70回以上ライブをやっている計算になる。)
中でもサンフランシスコのヘイト・アシュベリーのライブではファンに対して無料の食事、宿泊、音楽、そして健康管理も提供した。
またライブ中に演奏した曲の録音が許されており、録音したテープをファンの間で交換したりする文化も生まれた。
このようにGrateful Deadはまずファン同士が応援しやすいようなコミュニティづくりを行い、熱狂的なファングループの形成を行った。
彼らの熱狂的なファンはDead Heads(デッドヘッズ)と呼ばれ、ミュージシャンではヘンリー・ロリンズやグレッグ・ギン、政治家にはビル・クリントンやアル・ゴア、女優のウーピー・ゴールドバーグ、芸術家のキース・へリングなど多種多様な有名人たちがいる。
昔のミュージシャンの主な収入源はレコード・CDの売り上げであり、Grateful Deadのような商法は考えられなかったが、現代のストリーミングサービスが主流になりレコード・CDの売り上げが劇的に減ったことを考えるとGrateful Deadの先進性がどれほど素晴らしいかわかる。
他にはない唯一のライブ体験
メジャーなバンドのライブでは演奏するセットリストを大きく変えたりしない。
これは多くの人が同じ曲・楽しみを享受できるように平等性を重視するからだ。
だがGrateful Deadは違う。
彼らは毎回セットリストを変更し、デッドヘッズ曰く「20%は変更せず、80%を大幅に変更」しているらしい。
またその20%も大幅にアドリブを入れたり、CD音源とは別の楽器で演奏したりなど創意工夫がなされるという。
このように毎回セットリストを変更するのは、自分たちの熱狂的なファンデッドヘッズを飽きさせないためであり、毎回違うことをして楽しませてくれるライブをすると印象付けることで何度もライブに行く価値があるバンドというブランドを作ったのだ。
特徴的かつ親しみやすいアートワーク
Grateful Deadはアートワークにも力を入れており、活動期間中は上の「骸骨」と「薔薇」をトレードマークにして宣伝を行い続けた。
中でも熊のマスコットキャラクターの『ダンシング・ベアー』はかなり有名で、もしかしたらGrateful Deadを知らない人でもこのマスコットは知っているのではないかと思う。
この『ダンシング・ベアー』は何度もバンドのアルバムジャケットのデザインを担当しているボブ・トーマスにより作られたものであり、最初はアルバム『History of the Grateful Dead, Volume One (Bear’s Choice)』(1973) のバックカバー用にデザインしたものだった。
しかしこの可愛らしいクマは瞬く間にヒットして、ポップなデザインアイコンとして今もなお受け継がれている。
また彼らのマーケティングの詳細は以下の書籍で知ることができる!
メンバー
ジェリー・ガルシア
リードギター/ボーカル。
バンドのリーダー的存在であり作曲の要。(ただ彼自身はリーダーとしての役割を好んでいない)
ヒッピーの聖地カリフォルニア州サンフランシスコ出身であり、父がプロの音楽家であったこともあり、幼少期から音楽に触れていた。
また4歳の時に薪割りをしていた際彼の兄が誤ってジェリーの右手中指を3分の2ほど切断した。
中学高校時代は音楽や美術の才能が開花して先生までもが認める生徒であったが、同時期にマリファナを嗜み始める。
彼はブルーグラス(スコットランド・アイルランドの伝承音楽をベースにしたアコースティックミュージック)から影響を受けており、そのジャンルを軸にカントリーやフォーク・ジャズ・ブルースなどを融合したことで従来のロックに新たなアプローチを加えた。
彼はライブや楽曲制作において即興性を重視しており、この音楽における自由さが「ヒッピー・ムーヴメントの代表」として強い存在感を与えた。
しかし彼は1995年8月9日、53歳の若さでこの世を去る...
死因は心筋梗塞であり、長年のドラッグ摂取や過度の肥満、喫煙依存、および糖尿病などによって良い健康状態ではなかった。
2023年にローリング・ストーン誌が発表した『史上最も偉大なギタリスト250人』で第34位に選出されている。
ボブ・ウェア
リズムギター/ボーカル。創設時からのメンバー。
幼少期から音楽に触れていたが、ピアノもトランペットも上達しなかったため13歳でギターを始める。
また彼は失読症であったため、何度も学校を退学していた。
16歳の時にサンフランシスコのパロアルトの楽器屋でジェリー・ガルシアと出会い意気投合。
その後Grateful Deadのリズムギター/ボーカル担当として活動を開始。
結成当初はジェリー・ガルシアとフィル・レッシュからボブの演奏技術について苦言を呈し、バンド内の雰囲気は悪くなった。
しかしその後彼のギター演奏は開花して、彼は複雑なコードボイシングを演奏の中に取り入れるようになった。(ボイシング・・・和音に含まれるそれぞれの音の垂直的な間隔と並び順を決めること)
また70年代に入るとスライドギターにも挑戦するようになり、自身のソロアルバムをリリースするようにもなった。
フィル・レッシュ
ベース/ボーカル。創設時からのメンバー。
元々はジャズのトランペット奏者であり、評価が高いサンマテオ・カレッジのビッグバンドに所属していた。
しかし同校をすぐに中退して郵便局員として働き、それ以外はレコーディングエンジニアのボランティアをするようになった。
レコーディングエンジニアのボランティアをしているときにジェリー・ガルシアと出会い意気投合。
ジェリー・ガルシアからベーシストとしてGrateful Deadに参加しないかと誘われたが、フィルは一度もベースを弾いたことが無いため驚いたという。
しかし彼は元々音楽の素養(ジャズ・クラシック)があり、従来のロックのベースの役割を知らなかったことから、メロディックかつ音楽理論に基づいたベースプレイを編み出した。
影響を受けたベーシストとして、ジェファーソン・エアプレインのジャック・キャサディを挙げている。
ビル・クルーツマン
ドラム。創設時からのメンバー。
主にレイ・チャールズなどのR&Bの音楽から影響を受けている。
1967年に加入したドラマーのミッキー・ハートと共にバンドのリズムセクションの中核を担った。
またミッキーの方が技術が高かったため、彼からドラムのテクニックやコツを学んだ。
しかしミッキーは1971年にバンドを脱退。(原因はバンドのマネージャーでもあった彼の父がバンドの資金7万ドルを横領したことであった...)
ロン・”ピッグペン”・マッカーナン
キーボード/ボーカル。創設時からのメンバー。
本名はロナルド・チャールズ・マッカーナンだが、不潔な風貌から”ピッグペン”と呼ばれるようになった。(”ピッグペン”とはスヌーピーが出ている漫画『ピーナッツ』の不潔なキャラクター)
彼の父親はR&Bやブルースばかりを流す局のラジオDJであったため、彼もまたR&Bやブルースを好みピアノやハーモニカをするようになった。
他のメンバーはドラッグをやっていたが、彼はもっぱらアルコールばかりを飲んでいた。
そんな生活のせいか1973年3月8日、27歳の若さで胃腸出血でこの世を去った...
ロバート・ハンター
作詞家。
バンド結成当初からGrateful Deadの楽曲の作詞を担当している。
またジェリー・ガルシアの最初の友人であり、Grateful Deadを結成前に2人で「Bob and Jerry」というデュオを結成していたほどだった。
彼の作詞能力の評価はかなり高く、1994年にGrateful Deadがロックの殿堂入りを果たしたとき、ロバートは演奏者でないのにもかかわらずこの賞を受賞した。
またあのボブ・ディランが彼に対して「言葉の才能がある」・「僕とロバートは2人とも、今の作詞家として通用しているものとは違うタイプの曲を書いている」と絶賛したほどだった。
そんな彼も2019年9月23日に78歳で脊髄膿瘍によりこの世を去った...
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