英国の暗黒時代が生み出した時代を象徴するバンド『The Smiths(ザ・スミス)』
70年代末から80年代にかけてのイギリスは暗黒時代であった。
賃金の低下・失業率の上昇、イギリスの若者が映画「トレインスポッティング」や「フルモンティ」のように働きもせず社会保障制度を利用して生きていた時代。
1982年、そんな若者の気持ちを代弁するようなバンドが結成された。
The Smiths(ザ・スミス)!
活動時期は1982年から1987年とたったの5年間。
しかしこの短い期間に彼らが残した音楽が後のUKロックシーンに多大な影響を与え、海を超えて世界中のオルタナティブロックにも影響を与えたのだ。
最強のコンビの一角
人気ロックバンドには一人の天才が引っ張て良い音楽を作るパターンがあれば、二人の天才の相乗効果によって音楽を作るパターンがある。
- ビートルズのレノン&マッカートニー
- ストーンズのミック・ジャガーとキース・リチャーズ
- ピンク・フロイドのロジャー・ウォーターズとデヴィッド・ギルモア
- The Clashのジョー・ストラマーとミック・ジョーンズ
- XTCのアンディ・パートリッジとコリン・モールディング
- Blurのデーモン・アルバーンとグレアム・コクソン
- The Libertinesのピート・ドハーティとカール・ラバー 他にもたくさんある。
そしてThe Smithsのモリッシーとジョニー・マーだ。
モリッシーは世の憂いや社会批判・自虐を彼独特のセンスで綴った詩は、メジャーシーンのロックやラブソングに共感できない若者たちを中心に共感を得て人気を博した。
またジョニー・マーのギターソロをせず、バッキングやアルペジオのフレーズを駆使して伴奏に徹するプレイスタイルは後世に多大な影響を与えた。
メンバー
モリッシー
ボーカリストでありイギリスを代表する作詞家!
モリッシーは内気でオスカーワイルドを好む文学好きの青年という一面もあり、肉食批判・イギリス王室批判という過激な一面を持つ。
モリッシーは元々アメリカのNYパンクシーンで活躍していた「ニューヨーク・ドールズ」の大ファンで、バンドを結成する前は彼らのファンクラブのイギリス支部長を務めており、また様々なバンドの論評を新聞社・出版社に投稿していた。
また他のミュージシャンに対する批評をすることで有名で、彼の批評はジャンル・国籍・先輩・後輩・同世代に関わらず行われる。
中でもにThe Cureとは仲が悪く、モリッシーは「ザ・キュアーは『クソ』という言葉の新たな代名詞」と批判した。
一方The Cureのロバート・スミスも「モリッシーが肉食批判してるなら俺は肉をたくさん食べるよ、だってあいつが嫌いだから。」とも言い残している。
ジョニー・マー
The Smithの天才ギタリストにして作曲担当。
元々はモリッシーが書いているバンド論評の読者であり、彼がモリッシーの家に尋ねたことでバンドが結成された。
彼のギターソロをせず、無駄を一切省いたバッキングやアルペジオのフレーズを駆使して伴奏に徹するプレイスタイルは後世に多大な影響を与えた。
2011年発表の「ローリングストーンの選ぶ史上最も偉大な100人のギタリスト」において、第51位にランクイン!
The Smiths脱退後は様々なミュージシャンとコラボ・楽曲提供・セッションギタリストとしてお活躍している。(主にModest Mouse,The The,New Orderのバーナード・サムナー、Pet Shop Boysのニール・テナントなど)
アンディ・ルーク
ベーシスト。
ジョニー・マーの学友でありThe Smiths結成以前にも彼とファンクバンドを組んでいた。
アンディははじめギタリストであったが、あとからギターを始めたジョニー・マーの上達速度に驚き、敵わないと思いベースに転向した。
しかし彼のベースプレイはかなりアグレッシブでフレーズも複雑、モリッシーやジョニー・マーの凄さに皆注目するが、彼のベースプレイもこのバンドの持ち味の一つである。
またアルバム『The Queen Is Dead』を製作中に麻薬(ヘロイン)を使用していたためバンドをクビにさせられるが同アルバム発表後、すぐにバンドに復帰している。
マイク・ジョイス
ドラマー。
元はVictimという名前のパンクバンドのドラマーをしていたが、The Smithsに加入。
1996年にマイクはモリッシー・マーを「僕のロイヤリティがThe Smithsのライブやアルバムの利益のうち10%しか許可されていなかった」と訴え裁判を起こす。
裁判の結果、法廷はマイクの訴えを認め100万ポンド相当の利益を遡及して受け取る権利があること、今後のThe Smithsの25%の権利を受け取ることが決定した。
この一件でモリッシーをマイクとの間に確執が生まれることとなった。
おすすめの曲
This Charming Man
『The Smiths』(1stアルバム/1984年)、収録曲。
初めて聴くなら絶対これ!
僕は初めてこの曲のはじめのギターフレーズ聴いただけで、頭の中で雷が落ちたような衝撃を受けた。
全く歪みのないクリーントーンで奏でられるバッキングとアルペジオをうまく使い分けた伴奏フレーズを聞いたことがなかったから。
当時ギターキッズだった僕は真っ先にこのフレーズを練習した。それくらい衝撃的だった。
モリッシーの歌い方も他とは違う。ほとんどのバンドが高い声で歌いシャウトしているのに、モリッシーはテノール音域の低い声でどこか寂しげに、どこか艶美に歌い上げる。
歌詞の内容の「貧しい美少年がとある魅力的な男性から助けられる」というストーリー。
PVも衝撃的、シャツの上ボタンをはずし胸がはだけているモリッシーがモミの木の枝を持って振り回すながら歌っている。
UKインディーシングルチャートで1位。
UKシングルチャートでは8位を記録。
あのオアシスのノエル・ギャラガーは10代の頃テレビでThe Smithsの「This Charming Man」の演奏をみて、「その日からジョニー・マーになってやろう、そう思うようになったんだ」と語っている。
Heaven Knows I’m Miserable Now
『Hatful of Hollow』(コンピレーションアルバム/1984年)、収録曲。
「僕の人生、僕が生きようが死のうが気にしない奴らにどうして大切な時間を捧げないといけなのか?」
という歌詞がある思春期の虚無感・絶望感を感じられる楽曲。
僕はこの歌詞を真に受けすぎて、4年間ほど生き方に苦労したため、聞きすぎにはご注意いただきたい。
UKインディーシングルチャートで11位。
UKシングルチャートでは10位を記録。
How Soon Is Now?
『Hatful of Hollow』(コンピレーションアルバム/1984年)、収録曲。
ディレイという音が遅れてくるギターエフェクトを利用した利用したイントロが印象的な曲。
幸せが今にもやってくるよと言われ、「今っていつ?」と根拠のない希望に対して疑いを突き付ける曲。
UKシングルチャートでは16位を記録。
Mステをドタキャンしたことで有名なロシアのガールズユニット「t.A.T.u」がカバーしている。
The Boy With the Thorn In His Side
『The Queen Is Dead』(3rdアルバム/1986年)、収録曲。
日本では「心に茨を持つ少年」という邦題で親しまれている。
憎しみの陰に強い愛の欲求がある少年が周りに信じてもらえないことを憂うという曲。
バンドの代表曲である。
UKシングルチャートでは23位を記録。
この曲はDinosaur Jr.のJマスキスがソロアルバム「Martin + Me」でカバーしている。
アコースティック風のカバーなのでおすすめ。
Cemetry Gate
『The Queen Is Dead』(3rdアルバム/1986年)、収録曲。
個人的にThe Smithsで1番好きな曲!
ジョニー・マー曰く「この曲のギターフレーズは曲にするほど面白いものではなかったと感じたが、モリッシーが気に入って『僕も手伝うからこの曲を完成させよう』と説得したから作曲できた」という。
アコースティックで美しい曲であり、キャッチ―なメロディも持ち合わせている曲。
この曲が没になる可能性があったなんて信じられない...
ある晴れた日に墓地へ行き、英国の実在の詩人ジョン・キーツとウィリアム・バトラー・イェーツの墓の傍で世の常を憂うという世界観にハマってしまった。
There is a Light That Never Goes Out
『The Queen Is Dead』(3rdアルバム/1986年)、収録曲。
バンド史上最高の名曲と名高い曲。
みじめで引きこもりの男がどこにでもいいから連れ出してほしいとか、2階建てバスに轢かれても君と一緒に死ねるならこんな素敵なことはないとか聞いていて悲しくなる曲。
どこまでも弱者の立場に寄り添う歌詞だから、当時の若者たちの心に響いたのだろうと思う。
UKシングルチャートでは25位を記録。
Ask
『The World Won’t Listen』(コンピレーションアルバム/1987年)、収録曲。
『This Charming Man』の次にギターイントロが好きな曲。
バンドの中でもやさしさを感じる曲で、「僕らを結び付けるものが愛じゃなくて爆弾でもいいんだ」という素敵な歌詞が好き。
UKシングルチャートでは14位を記録。
おすすめのアルバム
『Hatful of Hollow』
初めて聴く方にはおすすめ。
The Smiths初期の名曲は大抵入っているお得なアルバム。
これをきっかけにオリジナルアルバムを古い順から聞いてほしいと思う。
UKアルバムチャートで7位を記録。
メロディ・メーカー誌のTop 100 Greatest Music Albums(2000年発表)にて44位にランクイン!
またNMEが発表した『史上最高のアルバム500枚』にて第100位にランクイン!!
『Queen is Dead』
バンドで一番の名作であると名高いアルバム、それにしてもかなり挑戦的なタイトルだ。
メロディ・メーカー誌のTop 100 Greatest Music Albums(2000年発表)にて堂々の1位にランクイン!
またNMEが発表した『史上最高のアルバム500枚』にも堂々の第1位にランクイン!!
僕も個人的にこれがThe Smithsで一番のアルバムだと思っている。
UKアルバムチャートで2位を記録。


















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