Lo-fiサウンドを世に広めたUSインディー雄!Pavementを紹介!!
新しい音楽を作ろうとするうえで、「誰も考えたことのないメロディを作ろう」・「誰も聞いたことのない音を作ろう」・「誰もやったことのない歌い方をやろう」だとか考えるだろう。
これらと同様に重要な要素として「誰もやったことのない録音方法を見つけよう」というものがある。
それが今回紹介するPavementがやっていたLo-fi(ローファイ)という手法。
Lo-fiとは録音のレベルを敢えて下げて録音することで、微妙な歪み・ちょっとした雑音/響きを楽曲に取り入れ「アナログ特有の暖かみ」を表現したサウンド。
ただLo-fiの起源は諸説があるのでPavementが起源ではないが、Pavementを含めるSebadohやGuided by Voices、Beat Happening、Beckなどが90年代にLo-fi旋風を巻き起こした。
Pavementはこれらバンドと比べて何が違ったのだろうか?
今からその考察を説明します。
独自の道を突き進んだフロントマン、スティーブン・マルクマス
90年代初頭のアメリカ音楽業界ではオルタナティブロック・ムーブメントが起こっていた!
オルタナティブロックを一言では説明できない。でもこの時期に起こっている精神性の変化については語れる。
90年代初頭は80年代からの「エンターテインメントとしてのロックミュージック」が強くなり過ぎたアンチテーゼとして、60年代のロックに元々あった「反骨精神を取り戻そう」・「若者たちが力を合わせて世の中を変えていこう」という大きな流れが起こっていた。
そんな中で80年代のメジャー音楽業界を否定しつつ、60年代のロックの在り方も否定したのがPavementのフロントマン”スティーブン・マルクマス”であった。
彼は常に世の中を冷めた目線で見ていた。
オルタナティブロック・ムーブメントに関してもそうだ。
ロックバンドがライブでオーディエンスの心を一つにまとめようとしたりするメンタリティを陳腐なものであると一蹴!
オーディエンスたちの個性や心理状態を無視した無神経なパフォーマンスであると蔑んでいた。
”スティーブン・マルクマス”はひどい世の中をみんなの力で変えていこうなんて呼びかけない。
ただ世の酷さ・矛盾・欠陥を皮肉るだけ。
このような視点が一部のロックファンの心を奪い、彼らが解散してもなお長年愛される要因になっていると思う。
おすすめ曲
Summer Babe
1stアルバム『Slanted and Enchanted』収録曲であり、EPも発売された曲。
ギリギリ音がわかるくらいに荒く録音されたギターと緩い歌メロのハーモニーが90年代のインディーロックシーンに衝撃を与えた。
ローリングストーン誌が発表した「史上最高の曲500(2004年版)」にて本作が286位に輝いた!
Cut Your Hair
2ndアルバム『Crooked Rain, Crooked Rain』収録されており、シングルカットもされている。
彼らの初ヒットシングルであり、この作品によって一般のリスナーたちもPavementを知るようになった。
イントロから引き込まれるメロディやアンサンブルは流石としか言いようがない...
ルックス至上主義的な音楽業界を皮肉った歌詞が本当に彼らの音楽らしい。
PVもユニークなのでぜひ見てください!
USオルタナティブチャートで10位を記録!
またUKシングルチャートでも53位を記録した!
専門家たちからの評価も高く、2007年にイギリスの音楽雑誌NMEは「史上最高のインディーズアンセム50」において28位に位置付けた!
Gold Soundz
2ndアルバム『Crooked Rain, Crooked Rain』収録されており、シングルカットもされている。
バンドの中でもかなりポップな歌メロに彩られている名曲。
しかしチャートの成績はあまり芳しいものではない。
UKシングルチャートでは94位であり、アメリカのチャートには一切ランクインしなかった...
しかしピッチフォークが2010年に発表した「90年代のトップ200曲」というリストではこの曲を1位に入れた!
Shady Lane
4thアルバム『Brighten the Corners』に収録されており、シングルカットもされている。
彼らのアコースティックナンバーであり、「誰もが日陰の道を望んでいる」と歌った悲しい歌。
またこの曲のPVを担当したのはスパイクジョーンズ監督!
映画作品では『マルコヴィッチの穴』や『her/世界でひとつの彼女』が有名だが、元々はPVを多く手掛ける監督。
Pavement以外にもDaft Punkの『Da Funk』、Dinosaur Jr.の『Feel the Pain』、Beastie Boysの『Time For Living』など様々なPVを手掛けている。
Stereo
4thアルバム『Brighten the Corners』に収録されており、シングルカットもされている。
個人的にPavementの中でトップクラスにギターの音がカッコイイ曲だと思う。
歌メロもユニークでヒップホップみたいに言葉を放っていると思いきや、急に童謡チックになったり叫んだりとバラエティ豊かである。
また曲の2番の歌詞にカナダの大物バンドRushにのベース/ボーカルのゲディ・リーついての言及があり、
What about the voice of Geddy Lee ゲディ・リーの声ってどうなっているんだ?! How did it get so high? どうしてあんなに高い声になったんだ? I wonder if he speaks like an ordinary guy? 彼は普通の人みたいに話すんだろうか?
と少し毒っ気のある歌詞を入れている。
Carrot Rope
5thアルバム『Terror Twilight』の最終トラックに収録された曲。シングルカットもされている。
彼らのラストアルバムでありそのアルバムのトリを飾る名曲。
個人的にPavementの中で一番好きな曲。
10年近いバンド活動の中で彼らは音楽業界や社会に対する不満を皮肉ることで表現してきたが、本作ではそれらのスタイルを捨てて『希望』を歌ったのだ。
最後の最後で彼らが残したメッセージがポジティブなものであったことがなんだかアツいものを感じた。
おすすめアルバム
『Slanted and Enchanted』(1stアルバム/1992年)
バンドのデビューアルバムであり、専門家・批評家たちからの評価が一番高い名盤!
またPavementのフロントマン、スティーブン・マルクマスも本作をバンドの最高傑作であると公言している。
「Lo-fiサウンドとは何ぞや?」という問いに答えたアルバムであり、90年代における”最も影響力のあるアルバム”の一つとしてよくあげられる。
ローリングストーン誌が発表した「史上最高のロックアルバム500(2003年版)」にて本作を134位に位置付けた!
またピッチフォークもこのアルバムを大いに称賛し、10点満点中10点を付けた。
加えてピッチフォークが発表した「1990年代のトップ100アルバム」にて3位にランクインしている。
『Crooked Rain, Crooked Rain』(2ndアルバム/1994年)
初めてPavementを聴く方におすすめのアルバム!
Lo-fiサウンドとポップなメロディの融合が見事に実現されたアルバム!
また彼らの皮肉の混じった歌詞に磨きがかかり、アルバム中の楽曲「Range Life」にてThe Smashing PumpkinsとStone Temple Pilotのことを名指しでおちょくった。
ローリングストーン誌が発表した「史上最高のロックアルバム500(2003年版)」にて本作を210位に位置付けた!
またピッチフォークはこのアルバムも大いに称賛し、『Slanted and Enchanted』に続いて10点満点中10点を付けた。
『Terror Twilight』(5thアルバム/1999年)
バンドのラストアルバムであり、今までセルフプロデュースであったが今作はレディオヘッドやベックを担当した大物ナイジェル・ゴッドリッチをプロデューサーとして迎えた。
本作はLo-fiサウンドや皮肉交じりの歌詞などは息をひそめて、ひたすらグッドメロディを追いかけた名盤。
本作はバンドの中ですでに解散が決まった後に製作されたアルバムである。
ラストアルバムであることが分かったうえで制作したこのアルバムは、今までのスタイルを突き通すのではなく、今一度音楽そのものに向き合おうという姿勢を見せた。
またレディオヘッドのジョニー・グリーンウッドがハーモニカでレコーディングに参加している。
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