おもしろグッズのセールスマン2人が出会うシュールでブラックでナンセンスな人生の1シーンの数々!!
映画『さよなら、人類』は2014年に公開されたスウェーデンのコメディ映画!
第71回ヴェネツィア国際映画祭(2014年)にて映画『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』を抑え、映画『さよなら、人類』が金獅子賞(グランプリ)に輝いた。
タイトルそのものはたまの名曲『さよなら人類』を彷彿させるが、原題を直訳すると『実存について考えている枝に止った鳩』である。
これは本作の監督ロイ・アンダーソンがルネサンス後期の風景画家ピーテル・ブリューゲルの代表的な油彩画『雪中の狩人』にインスパイアを受けたためである。
『雪中の狩人』では木に止まっている鳥たちが下にいる狩人を眺めているのだが、ロイ・アンダーソンは「鳥たちは人間を見て何を思っているのだろう?」と感じたことから本作が生まれた。
俯瞰で見た人間の愚かさとその愛おしさを暗くて淡い色彩で描く名作コメディ映画を紹介!
あらすじ
サムとヨナタンの中年2人は吸血鬼の牙や笑い袋などのおもしろグッズを売るセールスマン。
サムは不愛想で高圧的、ヨナタンは泣き虫で繊細なためよく口論になる。
そんな2人はおもしろグッズの販売どころか、集金作業すらまともにできず、遂には迷子になってしまう。
2人は場末のバーに入って道を聞こうとしたが、あとから18世紀に活躍したスウェーデン国王カール12世が大勢の軍を率いてバーに入ってきた。
夢か現実かわからない世界でサムとヨナタンはどんどん険悪になっていく。
見どころ
捉えどころのない人々の群像劇
実は、上記のあらすじは半分正解で半分が不正解。
この映画は始め『死との出会い その1』と題して、老夫婦の夫が自宅アパートでワインを開けるときに力み過ぎて心臓発作になる話が描かれる。
その後『死との出会い その2』と題して、病室で老衰しそうな老婆が宝石・結婚指輪・死んだ夫の高級腕時計・現金7万クローネが入ったバッグを「天国に持って行く」と言って手放さない話が始まる。
このようにいくつもの短編が積み重なったり、ときには交差したりすることで映画が進んでいくのだ。
そのため伏線になりそうでならない描写もあるため、注意してみる必要がある。
他の群像劇映画の『マグノリア』や『パルプ・フィクション』くらい脳が疲れるかもしれない...
でもそれぞれのシーンの関連性に気づければその分この映画を楽しめるようになっている!
固定カメラが映す全39シーン
またこの映画の特徴、いやこの映画監督ロイ・アンダーソンの特徴としてズームやパンなどカメラは一切動かさないというのがある。
1シーンを一つの定点カメラで撮影して、一つのストーリーが完結するまでカメラは回し続ける。
映画『さよなら、人類』はこのような定点カメラの長回しシーンが39シーンで構成されており、シーン1つ1つにテーマがある。
このように定点カメラで撮ることで人間を俯瞰で見ているような感覚を表現している。
個人的に好きだったシーンを紹介
空港のレストラン
空港のレストランで太ったおじさん客がエビサンドとビールを注文し会計を済ませた直後に突然死!
その場にいた他の客が救急車を呼んだり心臓マッサージをしたりする中、店員のおばさんが「誰かエビサンドとビール欲しい人?」と呼びかける。
周りがこの発言に固まっていたが、一人の男が「ビールだけをくれ!」と言ってビールだけを貰う。
「それどころじゃないだろ!」と内心ツッコミを入れて、その後の「ビールだけをくれ!」の発言がさらに面白かった。
店員のおばさんはせめて会計を済ませた商品をどうにかして処理したかったのに、ビールだけ持っていかれたため何も解決しなかった。
1943年のカフェ
あるカフェの美人ウェイトレスが美しい歌声で「1杯1シリングのお酒をどうぞ♪」と歌い上げて、ある老人がそのお酒を受け取るが他のお客は酒を受け取らない。
しかし店の奥にいた何十人もの海兵たちが歌に乗せて「俺たちは1シリングもない♪」と歌い返す。
ウェイトレスは「それならお金の代わりにキスしてくれたら1杯あげる♪」と歌い返す。
数十人の海兵たちはウェイトレスの前に列を作る。
このシーンでは真ん中に老人がいるのだが、数十人の海兵たちがウェイトレスにキスをしているときの気まずさ・悔しさがジリジリと伝わってきて思わずニヤニヤしてしまう。
場末のバーにカール12世
サムとヨナタンが道に迷ったため、今いる場所がどこか知ろうと場末のバーに入る。
しかし店の外には謎の騎馬隊がおり、その兵士が2人が店のドアを開けると、将軍っぽい奴が馬に乗って乱入!
そして将軍っぽい奴が「女はこんなところに来てはいけないから帰れ!」と言い出す。
さらに将軍っぽい奴が店の端っこでゲームをしていたおっさんをむち打ちの刑に処す。
その後たくさんの騎馬隊を引き連れたスウェーデンの国王カール12世が馬に乗って店に入ってくる。
カール12世はバーのイケメン店員に惚れて、部下たちに歌を歌わせてイケメンの手を掴む。
非現実的な事象に対して現実的すぎる対応をするバーの人々の演技が大好き。
いきなり昔の国王とその軍勢がバーに来るが、バーにいた人々はこの事態を把握できず固まってしまうし、将軍の命令に対して一言では動かず三言目くらいでやっと動く感じがリアル。
またイケメン店員もカール12世に手を掴まれるが、目が泳ぎながらも絶対に嫌がる様子を見せまいとする様子も好きだ。
視聴するには?
現在はAmazon Primeにて視聴可能!
DVDも販売しているので是非チェックしてほしい!
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