革新性とポップを両立させたニューウェーブ系パワーポップバンド
今回はスモール・イン・ジャパンの一角、The Cars(カーズ)を紹介!
※スモール・イン・ジャパン・・・世界的に有名であるのに日本でのみあまり知られていないバンド
The Carsは1976年~1988年の間に活動していたアメリカのニューウェーブ系パワーポップバンド。(またバンド名は「メンバー全員車が大好きだから。」という単純な理由でつけたらしい。)
70年代ではギターロックバンドとして高い評価を得て、80年代になるとシンセサイザー志向のパワーポップ系の音楽となりリスナーや批評家たちから人気を集めた。
彼らの功績は大きく分けて2つ。
1つはギターロックとシンセサイザーとポップソングの三位一体の確立。
彼らは常に最新の音楽機材の更新を行い、次世代のサウンドに対して意識を背けることはなかった。
またそれだけにとどまらずThe Carsはギターやベース、ドラムなどの既存のアナログ機材を軽視することなく、それらサウンドがシンセサイザーなどの最新機材と調和するよう計算した。
もう一つは次世代バンド・アーティストの育成。
The Carsのフロントマンのリック・オケイセックはバンド活動と並行して他のバンドのアルバムプロデューサーを務めていた。
有名なバンドだと
- Weezer
- Suicide
- Bad Brains
- Bad Religion
- No Doubt
- Nada Surf
など多岐にわたる。
そんな彼らの音楽・アルバムを紹介!!
メンバー
リック・オケイセック
ボーカル/ギタリスト。
バンドのほとんどの作詞・作曲を担当しており、新進気鋭のバンドのアルバムプロデューサーとしても活躍していた。
しかしそんな彼は長い下積み期間を経験していた。
彼は1944年3月23日、メリーランド州ボルチモアで生まれる。
彼は1964年に1年足らずで大学を辞めて音楽活動を始める。
その後1965年に地元の音楽バラエティ番組に出演してたベンジャミン・オールの歌唱力・演奏に衝撃を受けてリックは彼に話しかける。
そして1968年にリックはオハイオ州コロンバスに引っ越ししていたが、偶然そこでベンジャミンと再会して意気投合。2人でIDNirvanaというバンドを結成した。
当初はフォークデュオバンドとして活動しており、1973年にパラマウントレコードと契約しデビューしたがデビューアルバムの売上が悪くすぐにクビになった。
その後もメンバーやバンド名を変えながら活動を続けたが、どこのメジャーレーベルと契約することは出来なかった。
1976年にようやくThe Cars(カーズ)を結成し。
1978年にエレクトラレコードと契約しデビュー。
このときリックは34歳であった。(※実際契約のとき、リックはあまりにも歳をとりすぎていることを気にして5歳若くサバを読んでいた。)
2019年9月15日、リックはニューヨークの自宅で亡くなっているのが発見された。
享年75歳、高血圧心疾患と冠状動脈疾患が原因とされている。
Weezerを始めBeckやKISS、Red Hot Chili Peppers、Rage Against The Machine、ブライアン・メイ、レニー・クラヴィッツ、キャロル・キングなど世代・ジャンルを問わず多くのミュージシャンたちが追悼の意を表した。
ベンジャミン・オール
ボーカル/ベーシスト。
リックと共にバンドのリードボーカルを担当し、おおよそ半々でベンジャミンがリードボーカルをする。
彼がリードボーカルを担当した楽曲は「Just What I Needed」・「Let’s Go」・「Drive」などヒット曲が多い。
元々地元のバンドのグラスホッパーズで活動しており、この時からリック・オケイセックはベンジャミンに注目していた。
しかしベトナム戦争の徴兵を理由にバンドは解散。
その後1968年にリックとオハイオ州コロンバスで再会し意気投合、2人でIDNirvanaというバンドを結成した。
その後リックと共に下積み期間を耐えて、ついに1978年にThe Cars(カーズ)としてエレクトラレコードと契約しデビューを果たす。
2000年10月3日、彼は膵臓癌でこの世を去る。
享年53歳という若さであった。
リック・オケイセックはベンジャミンへの追悼曲「Silver」を発表した。
エリオット・イーストン
リードギタリスト。
あの世界的に有名な音楽教育機関、バークリー音楽大学出身の左利きギタリスト!!
The Cars結成当時のメンバーであり、解散するまでの間ずっとリードギタリストとして活躍していた。
解散後はソロ活動とプロデューサー業に専念するようになった。
ギタリストとしての腕には定評があり、Guns N’ RosesのギタリストSlashはエリオットの簡潔かつメロディックのギターソロに音楽的影響を受けたと公言している。
グレッグ・ホークス
キーボード。
グレッグもあの世界的に有名な音楽教育機関、バークリー音楽大学出身であり作曲とフルートを専攻していた!!
彼はThe Carsの前身となるバンドRichard and the Rabbitsにも参加していた。
パートはキーボードであるが、フルートやサックス・クラリネット・ウクレレなど様々な楽器を演奏できる。
彼のバンドへの貢献は非常に大きく、シンセポップ・ニューウェーブとしてのThe Carsを支えた重要人物である。
The Cars解散後はセッションミュージシャンに転向。
ポール・マッカートニーやトッド・ラングレンなどの超大物ミュージシャンの作品参加している。
デヴィッド・ロビンソン
ドラマー。
元々はプロトパンクというジャンルで影響力があったバンド、ザ・モダン・ラヴァーズのメンバーとして活動していたが1974年で解散した。(このバンドはTalking Headのジェリー・ハリスンも在籍していた。)
その後The Carsに加入。
ちなみにバンド名のThe Carsはデヴィッドの発案によるものだった。
The Cars解散後は、音楽業界から身を引きレストラン経営をしている。
おすすめ曲
Just What I Needed
1stアルバム『The Cars』(1978年)、収録曲。
リードボーカルはベンジャミン・オールが担当。
彼らのデビューシングルであり、ニューウェーブとパワーポップの融合が見事になされた傑作!!
タイトなギターリフとシンセラインにエッジの効いたポップなメロディが乗っかる。
またギターソロも燃えるような激しさをパワーポップという枠組みに収まるよう簡潔に表現している。
Red Hot Chili PeppersやThe Strokes、The Killersなどのバンドがこの曲をカバーしている。
USビルボードホット100にて27位を記録!
UKシングルチャートにて17位を記録!
またローリング・ストーン誌の『オールタイム・グレイテスト・ソング500』(2021年版)では369位にランクイン。
Candy-O
2ndアルバム『Candy-O』(1979年)、収録曲。
シングルカットされていないが批評家からの人気が高い曲。
ギターロックに重きを置いており、とくにギターソロがバンド史上最もカッコよい曲であると思う。
Melvinsがこの曲をカバーしている。
Let’s Go
2ndアルバム『Candy-O』(1979年)、収録曲。
リードボーカルはベンジャミン・オールが担当。
ミドルテンポでフックの効いた動きのあるベースラインとレーザーのようなシンセサウンドが特徴的。
USビルボードホット100にて14位を記録!
UKシングルチャートにて51位を記録!
Shake It Up
4thアルバム『Shake It Up』(1982年)、収録曲。
リードボーカルはリック・オケイセックが担当。
ディスコソングやダンスロックをフィーチャーした楽曲。
この楽曲ではシンセサイザーのリフが中心になって楽曲が展開されている。
USビルボードメインストリームロックチャートで2位を記録!
USビルボードホット100にて4位を記録!
USダンスクラブソングスにて14位を記録!
You Might Think
5thアルバム『Heartbeat City』(1984年)、収録曲。
リードボーカルはリック・オケイセックが担当。
初心者におすすめのキャッチーなパワーポップソング!
歌詞は男女二人の微妙で煮え切らない関係性について歌っている。
この曲はPVが有名で世界で初めてCGが利用されたミュージックビデオでもある。
MVでは女性の部屋の鏡やバスルーム、棚に小さくなったバンドメンバーが潜んでいるという内容であるため、当初この曲はストーカーの曲ではと疑われていた。
1984年に初めてMTVビデオミュージックアワードが開催され、この曲のPVは初代ビデオ・オブ・ザ・イヤーを受賞した!!
これは当時同じくノミネートにあったマイケル・ジャクソンの「Thriller」やシンディ・ローパーの「Girls Just Want to Have Fun」、The Policeの「Every Breath You Take」などを抑えての受賞であったため、かなりの快挙であった。
USビルボードメインストリームロックチャートで1位を記録!
USビルボードホット100にて7位を記録!
USダンスクラブソングスにて14位を記録!
またこの曲は2011年にWeezerがカバーし、このカバーヴァージョンが映画『カーズ2』の劇中歌に採用されたため若い世代でも聞き馴染みがあるかもしれない。
Drive
5thアルバム『Heartbeat City』(1984年)、収録曲。
リードボーカルはベンジャミン・オールが担当。
バンドでは珍しいバラードソングでありながら、バンド最大のヒット曲。
美しくかつゴージャスなサウンドスケープにベンジャミンのキレイな歌声がマッチした夜の静寂に合いそうな楽曲。
また当時この曲が巨大チャリティーイベント「ライヴエイド(LIVE AID)」のアメリカ公式テーマソングに選ばれたこともきっかけとなって大ヒットとなった。
USビルボードメインストリームロックチャートで3位を記録!
USビルボードホット100にて3位を記録!
USアダルトコンテンポラリーにて1位を記録!
Magic
5thアルバム『Heartbeat City』(1984年)、収録曲。
リードボーカルはリック・オケイセックが担当。
コーラスのかかった激しめのギターサウンドとバックボーカルのハーモニーはポップであるがハードロック色の強い楽曲。
デフ・パレードっぽく感じるが、これは当時のプロデューサーがデフ・パレードも担当していたマット・ラングであったことが関係していると思う。
PVは野外プールで行われる仮装パーティーの様子が映されている。
メンバーがプールの水の上を歩き、楽曲タイトル同様に「It’s Magic(魔法だよ)」と歌い上げる。
USビルボードメインストリームロックチャートで1位を記録!
USビルボードホット100にて12位を記録!
おすすめアルバム
『The Cars』(1stアルバム/1978年)
鮮烈なデビューを飾った「ニューウェイブ/ギターロックのクラシック」と呼べるアルバム!
デビューアルバムにして捨て曲が存在しない完璧なアルバム!!
楽曲そのものの完成度の高さと、シンセポップやニューウェーブなどの当時革新的であったジャンルをしていたこともあり批評家たちから絶賛された。
このアルバムはUSビルボードチャート200で18位を記録。
2003年に発表された「ローリング・ストーンの選ぶオールタイム・ベストアルバム500」にて282位にランクインされた。
『Candy-O』(2ndアルバム/1979年)
50年代の爽快なギターロックンロールに接見したヒットアルバム!
前作の大成功を受けてThe Carsは前アルバムのリリース日からたった1年後に2ndアルバムを発表した。
前作のようなシンセポップ・ニューウェーブ路線は控えめになり、主にギターロックソングが多いアルバムとなっている。
特に「Candy-O」はバンド史上最大のギターロック曲だと思う。
前作の路線が好きだった批評家にとっては物足りない感じのするアルバムであったが、チャート成績に関しては前作をはるかに上回った。
このアルバムはUSビルボードチャート200で3位を記録。
『Heartbeat City』(5thアルバム/1984年)
バンドの集大成であり最大のヒットアルバム!!
デビューアルバムから4thアルバムまでプロデューサーがロイ・トーマス・ベイカー(QueenやJourneyを見出したことで有名な名プロデューサー)であったが、本作からはマット・ラングが起用された。
サウンドが今までと違い、鮮明で清涼感のあるポップな仕上がりになった。
バンド史上最大のヒットアルバムであり、「You Might Think」・「Drive」・「Magic」などのヒットシングルが収録されている。
USビルボードチャート200で3位を記録。
USビルボードロックアルバムで1位を記録。
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