『ビートルズ』×『ポップアート』×『シュルレアリスム』が奇跡の融合!!
説明するまでもないが60年代のビートルズの勢いは凄まじく、音楽のみならず映画業界にも進出して何本もの映画が製作された。
ビートルズが活動していた頃に製作された映画のみに絞ると
- 『ハード・デイズ・ナイト』(1964年)
- 『ヘルプ!4人はアイドル』(1965年)
- 『マジカル・ミステリー・ツアー』(1967年)
- 『イエロー・サブマリン』(1968年)
- 『レット・イット・ビー』(1970年)
と1962~1970年というたった8年間で5つの映画を作っている!
その中でも『イエロー・サブマリン』を今回紹介する。
実はこの映画の制作過程において、ビートルズのメンバーたちは映画製作自体に乗り気じゃなかった...
当時メンバー全員がインドのマハリシ・マヘーシュ・ヨーギーの下での瞑想の修行をしていたこともあり、音楽製作自体にも集中しておらず映画にも期待していなかったという。
しかしメンバーたちがインドから帰還し、制作途中のアニメ映像を見て意識を変える!!
そのアニメ映像はただの娯楽映画ではなく芸術性の高い作品であったからだった。
ビートルズは負けじと映画専用の楽曲の制作に取り掛かり、スタジオアルバムにはない名曲を何曲も作った!!
良いロックバンドだからこそ良い映像が作られるし、良い映像があったからこそより良い音楽が作られる。
そんな奇跡の相乗効果によって作られたミュージカルアニメーション映画『イエロー・サブマリン』について紹介する!!
あらすじ
昔々、海の底にある平和な国ペパー・ランドがあった。
ある日ペパー・ランドの人気楽団サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンドがコンサートを開いていると、音楽が大嫌いなブルー・ミーニーズが現れ、ペパー・ランドへの侵略を始めた。
ブルー・ミーニーズの攻撃によって、平和な王国からは愛や音楽が失われてしまう。
なんとかブルー・ミーニーズの攻撃を逃れたペパー・ランドの指揮者のフレッドは、司令官に任ぜられ、潜水艦「イエローサブマリン」に乗って外界へ助けを求めることにする。
フレッドはリヴァプールにたどり着き、偶然出くわしたリンゴ・スターに助けを求める。
リンゴ・スターは他のメンバーのジョン・レノン、ジョージ・ハリスン、ポール・マッカートニーを誘い、潜水艦「イエローサブマリン」に乗ってペパー・ランドへ向かう!!
見どころ
芸術性の高い映像!!
なんといってもあのビートルズ本人たちが感動したと言われる映像を見られるのが、本作の醍醐味であると思う!!
この映画の映像は20世紀芸術の集大成的要素で溢れている。
大体の人々はこの映画を『サイケデリックポップアート映画』だと定義している。
たしかにそう思わせる要素が多いが、それだけではない!!
シュルレアリスムやアメリカンポップアート、切り絵のストップモーションアニメ、コラージュなど様々なスタイルや技法を踏襲している。
ディズニーアニメや『トムとジェリー』、『ルーニーチューンズ』などの動きのあるアニメーションとは別の路線で勝負をしていた。
そのため既存のアニメそのものに興味がない人でも楽しめるかもしれない要素がたくさんある!!
映画で初めて発表された名曲たち
この映画のために作られた、また未発表だった4曲がこの映画で使用されている!!
しかも4曲ともかなり良い曲なので1曲づつ紹介していきます!!
All Together Now
ポール・マッカートニーが作曲。
ポールが子供向けを意識して作った曲であり、童謡のようなキャッチーなメロディが癖になる。
歌詞も簡単で誰でも歌えるように意識されていることが分かる。
映画ではビートルズのメンバー全員がイエロー・サブマリンに乗り込むシーン、および映画のエンディングでこの曲が流れた!
日本では日テレ系の番組『今夜くらべてみました』でゲストが登場するときの曲として使用されているので有名だと思う。
Only A Northern Song
ジョージ・ハリスン作曲のサイケデリックポップソング!
メロントロンやトランペット、ハモンドオルガンなどをでたらめにオーバーダビングさせたかなり実験的な曲。
曲の内容は音楽業界の著作権管理の汚さを皮肉ったもの。
タイトルのノーザン・ソング(Northern Song)とはビートルズの楽曲著作権や印税を管理する会社「ノーザン・ソングス」のことを指している。
「ノーザン・ソングス」は1965年にビートルズとマネージャーのエプスタイン、DJM社によって設立された合同会社であった。
しかしビートルズもエプスタインも当時著作権に関する法律に疎かったため、自分たちがかなり不利な利益分配を強いられていた。
ジョージはその当時のことを批判するためにこの曲を書いた。
またサイケデリックロックとしての評価が高く、2013年にUltimate Classic Rockに寄稿したデイヴ・スワンソンは、「Top 10 Beatles Psychedelic Songs」で「Tomorrow Never Knows」、「I am the Walrus」に次ぐ第3位に本作を挙げている。
Hey Bulldog
ジョン・レノン作曲のオシャレでカッコいいロックナンバー!!
ピアノリフ中心のミドルテンポのロックソング!
個人的にビートルズで好きな曲ベスト10には入るくらい好きな曲!!
というより実際にビートルズ好きの間でもこの曲は評価が高い。
イギリスの辛口音楽批評メディア”NME”が発表した『ビートルズ究極の名曲ベスト50』にて、あの『Let It Be』・『Hard Day’s Night』・『Yesterday』・『Help!』などの名曲を抑えて第11位にランクインした!!
またフーファイターズのフロントマンであるデイヴ・グロールはこの曲に対し以下のようにコメントした!
僕にとっては、これぞ典型的なビートルズのロックだ。
ポールのうねるベースライン、リンゴのドラム・フィル、ジョージのギターのザラついたディストーション、そして、ジョン・レノンの喉の奥だけが生み出せるヴォーカル・サウンド……はっきり言って、ビートルズがいなかったらミュージシャンになってなかったね
デイヴ・グロール(フーファイターズ)/https://nme-jp.com/feature/7910/
It’s All Too Much
ジョージ・ハリスン作曲のまたまたサイケデリックポップ!
ジョージのLSD体験と超越瞑想体験によって生み出された楽曲であり、ジョージ特有のインド趣味が全開になっている。
インドの伝統楽器のシタールやギターのフィードバックノイズ、ブラスセクションなど密度の濃い作品!!
ジョージ好きにはたまらない一曲だ!!
あの頃思い描いてた未来...そして現実...
ジョンとジョージの未来・・・
僕はこの映画を見るたびに毎回悲しい気持ちになるシーンがある。
それはビートルズのメンバー全員がイエロー・サブマリンに乗ってペパーランドに向かうのだが、道中で時間がでたらめに進んだり戻ったりする空間に行ってしまうシーンがある。
この空間に入ると潜水艦内にある時計針が高速で回転し、メンバーが子供に戻ったりおじいちゃんになったりと大騒ぎする。
その中で時計の時刻が2009年(映画公開当時が1968年なので41年後の未来)を指して、ジョン・レノンとジョージ・ハリスンが髭もじゃのおじいちゃんになってしまう。
このシーンがとてもつらい...
2人とも2009年になる前にこの世を去ったからだ・・・
ジョンは1980年に狂信的なファンに銃で撃たれ死亡。(享年40歳)
ジョージは2001年に肺がんと脳腫瘍で死亡。(享年58歳)
2人ともおじいちゃんと呼ばれる歳になる前に亡くなってしまったのだ。
映画公開当時はビートルズはアイドルだから、作品内でおじいちゃんになっていく2人を見て「歳をとったジョンやジョージは見たくないなぁ~」と思っていた人もいるだろう。
しかし今となってはジョンやジョージがおじいちゃんになっていても生きていてほしいかった。
そんな気持ちになる。
ポールの未来・・・
またこの流れでポール作曲のビートルズの曲「When I’m Sixty Four」が流れる。
朗らかで落ち着いた曲調で「64歳になっても僕らは仲良い夫婦でいたい」という甘いメッセージを歌うラブソング。
しかし作曲者であるポールは映画公開当時1968年に当時婚約していた女優ジェーン・アッシャーに婚約破棄される。
原因はポールの浮気であった。
その後ポールは1969年にリンダと結婚するが、1998年にリンダは乳がんで逝去する・・・
またその後ポールは2002年に元モデルのヘザー・ミルズと婚約!
しかし2006年にポールとヘザーは離婚を発表...
この離婚の発表はポールが64歳の誕生日を迎える直前に行われた。
どうやら現実は「When I’m Sixty Four」のようにはいかなかったようだ...
そんなポールにある人物が64歳の誕生日プレゼントとして素敵なものを渡した。
ある人物とはあのビートルズを影から支えた功労者でありプロデューサー”ジョージ・マーティン”、の息子であるジャイルズ・マーティンであった!
ジャイルズ・マーティンはポールに内緒でポールの息子たちをアビーロード・スタジオに集めて、 「When I’m Sixty Four」 をレコーディングしてポールに聞かせたという!
素敵なプレゼントなのか?それとも嫌がらせなのか…?
視聴するには?
残念ながら現在イエロー・サブマリンの配信は行われていない...
でもDVDやBDは販売しているので視聴は可能!!
是非見てほしい!
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