英国流パワーポップを生み出したギターポップ集団
1970年代後半から1980年代前半のイギリスでは様々な新しい音楽ジャンルが生まれた時代であり、それらジャンルをひっくるめてニューウェーブと呼んだ。
今回紹介するバンドSqueeze(スクイーズ)が新たに生み出したジャンルは英国流パワーポップ!
生み出した?
いや正確に言えば60年代ブリティッシュロックのエッセンスを継承し、それらをポストパンク的サウンドで再構築したと思う。
彼らの音楽は後の世代にも多大な影響を与えており、BlurやSupergrassのようなブリットポップのバンド、KasabianやThe Killers, Razorlightのような00年代の人気バンドが彼らからの影響を公言している。
彼らはXTC並の影響力を持っているのにも関わらず、日本においてはXTCほど知名度がないような気がするので今回はスクイーズの魅力をたっぷり紹介したい!
メンバー
※スクイーズはメンバー交代が激しいため、有名なメンバーのみを抜粋。
グレン・ティルブルック
リードボーカル兼ギタリスト、オリジナルメンバー。
バンドの楽曲はほとんど彼が作曲している。
ちなみに作詞は相棒のクリス・ディフォードが担当!
このコンビは当時「レノン=マッカートニーの正当継承者」としてマスコミから騒がれていた。
作曲能力の高さから若手ミュージシャンへ楽曲提供を行うこともある。
作曲能力ばかり評価されるが、ギタリストとしてのプレイも素晴らしい。
クリス・ディフォード
リードボーカル兼ギタリスト、オリジナルメンバー。
バンドの楽曲はほとんど彼が作詞している。
しかし作詞しかできないわけでなく、1983年スクイーズ解散後に彼はエルヴィス・コステロやヘレン・シャピロなどと共同で楽曲制作をしている。
またエルトン・ジョンやWet Wet Wetなどの楽曲の作詞提供も行っている。
ジュールズ・ホーランド
キーボードでありオリジナルメンバー。本名はジュリアン・マイルズ・ホーランド。
スクイーズ結成前から彼はセッションミュージシャンとして活動していた。
しかし1979年、ソロ活動に専念するためジュールズはバンドを脱退。
その後セッションミュージシャンとして様々なアーティストとコラボ。
- スティング(The Police)
- エリック・クラプトン
- マーク・ノップラー
- ジョージ・ハリスン
- デヴィッド・ギルモア
などとコラボ。
またイギリスの人気音楽番組「The Tube」のホストとして1982年から1987年まで出演。
マルチに活動している。
ポール・キャラック
2代目のキーボード。
ソロ活動に専念するためバンドを脱退したジュリアン・ホーランドの後釜。
元々はエースという名前のバンドのフロントマンであった。
4thアルバム『East Side Story』の製作からバンドに参加しており、彼がボーカルを担当した曲「Tempted」はバンド史上最大のヒットシングルとなった。
このアルバムを発表後、彼はソロ活動に専念するためスクイーズを脱退!
ソロ活動と並行にセッションミュージシャンとして大活躍。
演奏力・歌唱力・ソングライティング能力、総合的に優れており名だたるアーティストのツアーやアルバム制作に携わっている。
- Roxy Music
- プリテンダーズ
- エルトン・ジョン
- The Smiths
- リンゴ・スター
- ロジャー・ウォーターズ
などかなり有名なメンツのアルバムまたはツアーに参加している。
おすすめ曲
Cool For Cats
2ndアルバム『Cool for Cats』収録曲、シングルカット曲。
彼らにとって最初のヒットシングル。
曲調はパブロックとBay City Rollersのようなポップさを融合させたもの。
ロンドンに越してきたある男の物語を軽快なビートにのせて歌い上げる。
テレビで西部劇映画、マフィア映画を見た男が良い気になってパブやディスコに出向くが上手くいかないというもの。
またタイトルの「Cool For Cats」とは1950年代から60年代までイギリスで放映されていた音楽番組の名前。
UKシングルチャートで2位。
Up The Junction
2ndアルバム『Cool for Cats』収録曲、シングルカット曲。
スローテンポで牧歌的な雰囲気があるポップソング。
歌メロの子気味良い韻のリズムが癖になる。
この曲の雰囲気はボブ・ディランの曲「Positively 4th Street」を参考にしたそうだ。
しかし歌詞の内容はイギリス労働者階級の悲惨な人生を風刺したもの。
歌詞の和訳を見たらみんな唖然とするかも...
UKシングルチャートで2位。
Pulling Mussels (From The Shell)
3rdアルバム『Argybargy』収録曲、シングルカット曲。
スクイーズで最もキャッチーな曲一つ!
彼らのライブ定番曲!
バンドでのホリデーキャンプの思い出から出来た曲。
ギターとベース、キーボードの主張がかなり激しいのにも関わらず、ジャズの如く調和がとれているという完璧な構成。
ギターソロパートからピアノソロパートへの移り変わりが自然過ぎてある種の美しさを感じる。
評論家たちからの評価も高く、時代を超えたカルトクラシックとも称される。
UKシングルチャートで44位。
Another Nail In My Heart
3rdアルバム『Argybargy』収録曲、シングルカット曲。
彼らのポップな失恋ソング。
曲の構成が特徴的で1回目のサビ終わりにすぐギターソロが入る。
またモーグシンセサイザーが採用されていたりと当時のニューウェーブミュージックのトレンドを取り入れている。
この曲のPVの最後、キーボードのジュリアン・ホーランドが怖い笑顔をカメラに向けながらピアノアルペジオを弾くので是非見てほしい!
UKシングルチャートで17位。
Tempted
4thアルバム『East Side Story』収録曲、シングルカット曲。
彼らの最大ヒットシングル。
またこの曲のボーカルは当時新メンバーのキーボードのポール・キャラックが担当。
またこの采配はプロデューサーであったエルヴィス・コステロによるものであった。
叙情系ポップ、または英国流ソウルミュージックって感じの音楽。
とくにベースラインが緩やかでセクシー、モータウンっぽい感じがあって趣深い。
この曲は他のアーティストにも大変人気があり、スティング(元The Police)やジョー・コッカーなどがこの曲をカバーしている。
UKシングルチャートで41位。
USメインストリームロックチャートで8位を記録した。
USビルボードホットチャートで49位を記録した。
Sting Cover
Joe Cocker Cover
Black Coffee in Bed
5thアルバム『Sweets From a Stranger』収録曲、シングルカット曲。
ポップなキーボードリフから始まる落ち着いた曲。
モータウン系の音楽にかなり影響を受けており、とくにギターソロにその特徴が顕著に表れている。
ゲストコーラスを担当しているのはポール・ヤングとエルヴィス・コステロという超豪華ゲスト!
UKシングルチャートで51位。
USメインストリームロックチャートで26位を記録した。
おすすめアルバム
『Cool for Cats』(2ndアルバム/1979年)
本国イギリスで初めてチャートインした出世作
このアルバムから4つもシングルカット曲が発売され、その中でも「Cool for Cats」と「Up the Junction」はともに全英2位を記録するヒットとなった。
アルバムの全体の雰囲気はエッジの利いたパワーポップ。
時代のせいかシンセサイザーやピアノがフィーチャーされた楽曲が多い。
個人的におすすめの曲は
UKアルバムチャートで45位を記録!
『Argybargy』(3rdアルバム/1980年)
イギリスとアメリカ両方で商業的成功を収めた名パワーポップアルバム
前作の成功によってスクイーズは過酷なツアーライブを敢行。
そしてツアー終了後、フロントマンのクリスが1979年の夏に妻とニューヨークに滞在。
その間にクリスは40もの詩を作り、この詩をもとに製作されたアルバム。
専門家によってはこのアルバムを彼らの最高傑作と称する人も少なくない。
というのもこのアルバムは後のニューウェーブサウンドの雛型を作ったクラシックであるという見方が出来るためである。
音楽批評メディアPasteが発表した「最高のニューウェーブアルバムベスト50」にて20位にランクインされている。
UKアルバムチャートで45位を記録!
USビルボードチャートで71位を記録!
『East Side Story』(4thアルバム/1981年)
スクイーズの最高傑作と名高く、アメリカのR&Bやロカビリーを取り入れた名盤
アルバムのプロデューサーはあのエルヴィス・コステロ!
※しかし本当は2枚組のアルバムを予定しており、1枚目のA面はエルヴィス・コステロ、B面はデイヴ・エドモンズ、2枚目のA面はニック・ロウ、B面はポール・マッカートニーであったがあまりにも壮大なプロジェクト故に頓挫した。
楽曲は今までのニューウェーブサウンドから脱却し、よりイギリス流のギターポップを極めている雰囲気がする。
それだけにとどまらず、ロカビリーやR&B、サイケデリア、カントリーなどあらゆる音楽ジャンルを内包。
完成度に関しては彼らの中でも最高のアルバム!
UKアルバムチャートで19位を記録!
USビルボードチャートで44位を記録!
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