史上最もインディー音楽に真摯に向き合ったハードコアパンクバンド・・・Fugazi
ドラッグの歌には事欠かなかった。
どのジャンルにも関わらずね。
全員が「ハイになれ!ハイになれ!」って。
クラプトンがコカイン、ルー・リードはヘロインを歌い、みんなが「ブッとんで楽しもう!」
でも誰かが「そうじゃない!」と言わなきゃ。
イアン・マッケイ/映画『アメリカン・ハードコア』より
これはFugaziのフロントマン”イアン・マッケイ”の言葉であり、それと同時に彼らの音楽に対する姿勢を端的に鋭く表した言葉である。
”Fugazi”の功績として一番にあげられるのは、「ドラッグもしない、タバコも吸わない、酒も飲まない、愛のないセックスはしない。」という姿勢・歌詞、いわゆる”ストレート・エッジ”と呼ばれるスタイルを世に広めたことだ。
ロックと言えば「セックス、ドラック、アルコール」など上記のような事柄がほとんど占める。
しかしそれは純粋に音楽を楽しむのに必要な要素なのだろうか?
このような疑問に対する答え、それがFugaziというバンド。
崇高なインディーの精神
Fugaziはあくまでインディー/DIYに拘った。
というのはハードコアという音楽の世界とお金儲けの世界と完全に切り離したかったのだ。
彼らは普通のバンドのようにTシャツ・キャップなどのグッズは作らないし売らない。
グッズを作ってしまうとそれを管理・販売するスタッフが必要になり余計にお金がかかる可能性もあるし、何より自分たちの音楽を世に広めるのにあたってグッズそのものが不純物だと考えていた。
また彼らはチケット代を安く抑えるために、通常のライブハウスを使用せず公民館や公共の広場などでライブを敢行した。
さらに彼らは全年齢対象のハードコアをモットーにしているため、歌詞カードを無料で配布、ライブでもモッシュなどの危険な行為を諫めるなど配慮をしている。
彼らの真摯なスタイルが後のアンダーグラウンド・ミュージックシーンに多大な影響を与えた!
ジャンルを超えてリスペクトされた存在
Fugaziはハードコア界隈を超えて、様々なミュージシャンたちに影響を与えかつ尊敬されてきた。
彼らのことを言及したミュージシャンたちを箇条書きしていく。
- ジョン・フルシアンテ(Red Hot Chili Peppersのギタリスト)・・・『Californication』でのギタープレイはFugaziを意識したと公言。
- エディ・ヴェダー(Pearl Jamのボーカル)・・・Fugaziのライブを観に行ったことを「人生を変える出来事だった」と語る。
- エリオット・スミス・・・かつて彼が活動していたバンドHeatmiserはFugaziのようなバンドを目指していたことを公言。
- ジョニー・マー(The Smithsのギタリスト)・・・お気に入りのギタリストの一人としてFugaziのイアン・マッケイを挙げた。
- ジョー・ストラマー(The Clashのボーカル)・・・最もパンクの精神を表しているバンドとしてFugaziの名前を挙げた。
- ジョーイ・ラモーン(Ramonesのボーカル)・・・お気に入りバンドとしてFugaziを挙げて、彼らのことを”偉大な社会意識”であると称賛した。
これらはほんの一部であり、もっと多くのミュージシャンが彼らのことを褒め称えている。
Fugaziがどれだけ偉大なバンドかが少しは伝わったと思う。
バンド名の由来
バンドの名前の由来は、“Fucked Up, Got Ambushed, Zipped In”から。
直訳すれば「めちゃくちゃにされて、待ち伏せされて、死体袋に詰められて」
ベトナム帰還兵の証言を集めたマーク・ベーカー編『NAM 禁じられた戦場の記憶』(原書初版1981年)から取られたベトナム戦争時の隠語らしい。
おすすめ曲
Waiting Room
編集盤『13 Songs』、収録曲。
Fugaziで最も有名な曲。
イントロのベースラインを聞くと無意識に体が縦ノリで動いてしまうほどキャッチーな曲。
歌メロもポップでFugaziの中では珍しく全員で合唱できるタイプの曲。
初めてFugaziを聴く方におすすめ!!
この曲はRed Hot Chili PeppersやArcade Fireなどの著名なバンドがライブでカバーしている。
さらにミュージシャン以外ではあのコメディ俳優のジャック・ブラックがこの「Waiting Room」の口パク動画をInstagramに投稿していた!
またピッチフォークが選ぶ「1980年代のベストソング200」にて16位にランクインされた。
Turnover
『Repeater』(1stアルバム/1990年)、収録曲。
1曲目のトップバッター!!
引き込まれるようなベースラインと徐々に荒ぶっていく構成が完璧な曲。
まさしくトップバッターにふさわしい曲!
一番注目してほしいのは、曲の終盤!!
音源で聞いているはずなのに、まるでライブで聞いているかのような臨場感を感じる。
良い意味での粗削りを残してくれている。
Repeater
『Repeater』(1stアルバム/1990年)、収録曲。
序盤から歪み切ったギターリフ、サイレンのようなギターサウンドと硬質なベースとで奏でる暴力的なアンサンブルが素晴らしい。
特に注目してほしいのはリズム隊、曲の後半は”静と動”の表現が素晴らしい!
批評家からの評価も高く、ピッチフォークが選ぶ『1990年代のベストソング200』では第58位にランクインしている。
ポストハードコアバンドのLa disputeがこの曲をカバーしている。
Bed for the Scraping
『Red Medicine』(4thアルバム/1995年)、収録曲。
疾走感とグルーブ感が両立された傑作曲。
混沌と秩序の狭間にあるようなギターのアンサンブルに注目していほしい!!
ノイズロック的要素もあってFugaziの多面性を感じることが出来る。
Break
『End Hits』(5thアルバム/1998年)、収録曲。
たった2分10秒の曲。
しかしイントロに1分10秒使っているという、大胆過ぎる構成!
しかも歌っているのは20秒ほどなので、ほとんどインスト曲。
だがアンサンブルが素晴らしい。
無駄がほとんどない!それゆえの曲の短さだと思う。
Cashout
『Argument』(6thアルバム/2001年)、収録曲。
この曲は暗い雰囲気でグルーヴを重視している曲。
特にギターのサウンドが素晴らしく、Radioheadの『OK Computer』の時期のサウンドを彷彿させるような知的かつ禍々しい歪みを持つギター。
陰鬱さと激情の双方を表現している傑作。
おすすめアルバム
『Repeater』(1stアルバム/1990年)
バンド初のフルアルバムであり、最高傑作と名高いアルバム。
硬質なギターサウンドと複雑なリズムセクションの相互作用は、当時のハードコアシーン及び音楽シーンに衝撃を与えた!
アルバムのテーマは貪欲、暴力、セクシュアリティ、プライバシー、薬物乱用、死など様々なテーマに対応している。
本作はFugaziのイアン・マッケイが立ち上げたインディペンデントのレーベル「Dischord Records」からリリースしたが、元々は各社メジャーレーベルから「うちのレーベルからリリースしないか?」と誘いがあったそうだ。
しかしバンドは「メジャーレーベルに頼らなくても、アルバムの流通に問題はない」と判断し、誘いを全て断った。
結果このアルバムはインディーで販売したのにも関わらず、50万枚以上の売り上げを記録したそうだ。
Rage Against The Machineのベーシストのティム・コマーフォードは本作からの影響を公言している。
また批評家たちからの評価も高い。
ピッチフォークは「90年代のベストアルバムトップ100」にて本作を第52位に選んでいる。
またスピン誌は「過去30年間(1985〜 2014年)のベストアルバム300」にて本作を第70位に選出している。
『End Hits』(5thアルバム/1998年)
実験要素と溢れんばかりのエネルギーが融合した傑作。
あらゆるジャンルの要素をFugaziの持つパワーによってねじ伏せるように取り込んだという印象。
バンドの中でも異色な作品。
だが聞きやすい曲が多い!
シンセサイザーや電子ドラムなどの要素が追加されている。
しかしこのアルバムは賛否両論。
実験的な姿勢は評価されている一方、彼らはハードコアバンドであるため「本来ハードコアバンドとしてあるべき姿なのか?」という否定的な意見もあった。
しかし聞いておいて損はないアルバムだ!
『Argument』(6thアルバム/2001年)
ラストアルバムにふさわしいFugaziの集大成的作品!!
最後のアルバムではあるが彼らの音楽に対する挑戦的姿勢は全く失っておらず、ピアノやチェロなどの楽器を導入している。
アルバムのレコーディングも今までのアルバムの中で一番多く費やしたと語っている。
既存の曲をもう一度分解・再構築し、足りない部分はジャムセッションを重ねて作った。
そのため実験的な構成の曲がほとんどを占めている。
専門家たちからの評価も高く、ピッチフォークやNME、スピン誌などアメリカ・イギリスの辛口批評サイトが本アルバムを絶賛した。
またA2IM(アメリカインディペンデント音楽協会)が2002年度の「最優秀ロックアルバム」にこのアルバムを選んでいる。
『First Demo』(コンピレーションアルバム/2014年)
彼らのデモ音源!!
個人的に一番好きなFugaziのアルバム。
ハードコアバンドとしてFugaziの魅力はこのアルバムに集約されている。
Demo音源というのはただ演奏した曲を録音しただけのもの。
普通は録音したものをミキシングしたりマスタリングしたりなど、音源をより良いものに変えていくのだが、本作はそのような作業をしない既存の曲が収録されている。
そのためノイズ・ハウリングが入ったりやバンドメンバーの小声が入ったりもしている。
だがそれがいい!!
本来は取り除かれるはずの無駄な音が全部入っていることで、彼らのレコーディング現場に立ち会っているような臨場感・緊張感を感じられる。
ぜひ聞いてほしい!!























コメント