パンクに逆らう音楽の追求!?独自の轟音サウンドを形成し、その音が次世代の薪となり火となった功労者!
1990年代を代表するロックスター
Nirvana(ニルヴァーナ)のカート・コバーン。
彼の素晴らしいところの一つ。
それは自分が音楽業界の頂点に立ったときに、今まで自分たちの音楽を形成してくれたインディーバンドを次々と紹介して彼らの素晴らしさを世に広めて恩返ししたことだ。
そのバンドの1つが今回紹介するWipers(ワイパーズ)!
NirvanaはWipersの楽曲「D-7」・「Return of the Rat」などをカバーして、アルバムに収録したりライブで演奏することでWipersの存在を世に広めた。
Wipers(ワイパーズ)とは1977年にアメリカのオレゴン州ポートランドで結成されたバンド。
結成当時は曲のレコーディングのみを目的としたバンドであり、ライブやツアー、インタビューなどのあらゆるプロモーションを行わず曲作りに専念しようとした。
上記の活動方針を全て実行することは叶わなかったが、音楽活動においては常にインディー界隈で自分の追求するサウンドのみに専念した。
突飛な曲構成や今までになかった低くて陰鬱なディストーションサウンドは、80年代当時は世間一般には受け入れられなかった。
しかし彼らのサウンドに影響を受けたNirvanaやMudhoney、Dinosaur Jr.が90年代に活躍して再評価されるようになった。
そんな彼らの偉業を名曲・名盤と共に紹介していく!
グレッグ・セージという男
グレッグ・セージはWipersのボーカル・ギタリストであり、バンドのリーダー。
彼の音楽との向き合い方は他のミュージシャンとは違っていた。
グレッグは楽器の演奏を学ぶ前に、レコード制作を学んでいた。
彼の父は放送業界で働いていたため、プロ仕様レコード・カッティング旋盤を持っており、その機械でラジオから流れる曲を耳コピしてレコードをカットして友人に渡していたという。
レコードを制作するには、音の波数や波長など一般的ミュージシャン以上にサウンドに対する知識が必要であり、グレッグはその技術を中学生の頃に身に着けていた。
ゆえにグレッグは音楽においてメロディや歌詞以上にサウンドそのものを重視するようになった。
彼はギタリストであるが、本当はベースを弾きたかったらしい。(当時ギターよりも高価だったため諦めたそうだ。)
その理由は「低音域は変調がゆっくりなため、より大きく、よりクールな見た目の溝がレコードにできるから」とのこと。
常人では思いつかない理由だ・・・
また彼は音楽を芸術的表現の一環として強く考えているようで、商業的成功に対して関心が無いように思える。
実際Nirvanaが彼に対してツアーを一緒に回りたいというオファーを出したが、これを断っている。
さまざまな断る理由があるだろうが、その時期の彼はまだ現役で音楽活動を続けていたことから、有名になるチャンス以上のものを彼は重視していたのかもしれない。
おすすめ曲
Return of the Rat
『Is This Real?』(1stアルバム/1980年)、収録曲。
彼らの初期の名曲!
低音域が良く聞こえるように歪ませたディストーションサウンドが地を這って近づいてくるようなギターとベースがリスナーを興奮させる。
またパンクロックであるのにもかかわらずギターソロがある。
Nirvanaがカバーしている。
Nirvana cover
Mystery
『Is This Real?』(1stアルバム/1980年)、収録曲。
初心者におすすめの曲!
曲時間はたったの1分47秒、サウンドはグランジのような低音期のディストーションが響くが歌メロはかなりポップ!
まるでパワーポップの曲みたい!
それくらいポップ!
パンクを安売りしているのでは?という邪推はナンセンス!
なぜならこの曲がリリースされたのは1980年でパンクという音楽はニューヨークやカリフォルニアなどの海岸地域でしか浸透していなかった。
パンクサウンドでポップな歌メロを歌うというのは当時としてかなり画期的な試みであった。
D-7
『Is This Real?』(1stアルバム/1980年)、収録曲。
パンクであるのにも関わらず、かなりスローテンポを重視した珍しい曲!
しかしそれは曲の前半のみで、後半は曲自体をドライブ感のある構成にしてる。
タイトルの「D-7」とはディメンション7(7次元)の略称。
Nirvanaがカバーしている。
Nirvana cover
Youth of America
『Youth of America』(2ndアルバム/1981年)、収録曲。
パンクであるのにもかかわらず、10分を超える大作!
演奏時間がこれほど長いのは当時のパンクロックソング全般が短い演奏時間だったことに対する反発だったそうだ。
ドラムパターンは平坦でリズムも一定で、そこに様々な歪んだギターサウンドをフルコースのように詰めまくる!
クラウトロックのような不気味さとノイズギターの見本市会場のような楽曲!
Melvins(メルヴィンズ)が『Electroretard』(13thアルバム/2001年)でこの曲をカバーしている。
Melvins cover
Over the Edge
『Over the Edge』(3rdアルバム/1983年)、収録曲。
金属的な鋭いディストーションサウンドでイントロが始まる!
ドロドロしたサウンドではなくローファイチックで乾いたギターサウンドが特徴的。
ギターソロは単音をただ繰り返しているのだが、まるで金切り声で叫んだような悲痛さを感じるサウンドはなかなか忘れられないものになると思う。
Romeo
『Over the Edge』(3rdアルバム/1983年)、収録曲。
グルーヴ感とドライブ感が共存する歪んだベースリフが癖になる曲!
Wipersの中でも聞きやすい部類に入る、初心者におすすめの楽曲!
おすすめアルバム
『Is This Real?』(1stアルバム/1980年)
当時としては先進的すぎるノイズサウンドでカルト的人気を博したデビュー作にして怪作!
このアルバムを発売する以前のWipersはグレッグ・セージが主催するレーベルのトラップレコードでバンドのLPを販売していた。
そして地元インディーレーベルであるパークアベニューレコードがWipersに目をつけて、自社のレーベルにより『Is This Real?』を録音・販売した。
このアルバムは作曲に関してはストレートなパンクロックソングが多いが、サウンドは陰鬱でおどろおどろしい歪んだサウンド、一般的なパンクサウンドとは一線を画していた。
またWipersもアルバムに関するプロモーションをほとんど行わず、ライブも地元ポートランドで行うだけだったためほとんど注目されていなかった。
しかしこのアルバムがリリースされて10年後にNirvanaがこのアルバムに収録されている楽曲「Return of the Rat」・「D-7」をカバーしたことで世間から注目された。
『Youth of America』(2ndアルバム/1981年)
前作に比べてより複雑でポストパンク的曲構成が主体の実験的な傑作!
ガレージロック的な荒々しさとゴシックロックのような品を感じる陰鬱さがパンクロック。
そしてクラウトロック的な無機質さが相まって、プロト・グランジアルバムと呼ぶ人もいる。
ドラムやベースの音は控えめで、その分ボーカルとギターサウンドを強調している。
そのギターサウンドはドロドロとしているが時に明るく時に暗く、雷雲のような雰囲気が立ち込めているアルバム。
発売当時は本国アメリカでは良い評価を得られなかったが、ヨーロッパの音楽業界では好評だったという。
またSonic Youthのリーダーであるサーストン・ムーアはこのアルバムから音楽的インスピレーションを得たことを公言している。
ピッチフォークが発表した「80年代のベストアルバム100」にて102位にランクインした。
『Over the Edge』(3rdアルバム/1983年)
前作の芸術的路線から脱却し、再び伝統的なパンク的楽曲多くなったアルバム!
このアルバムではグレッグ・セージは新しいサウンド追求しているが、メロディセンスも抜群であることがわかる。
- Doom Town
- So Youg
- Messager
- Romeo
など歌メロが良い楽曲がたくさんある。
まさに原初のポップパンク・アルバムとも言える。
またこの時期にはWipersの楽曲がラジオで放送されるようになったという。
またサウンドは低音域を丸ごと削ってかなりローファイな印象を受ける。
Dinosaur Jr.のギターボーカルのJ・マスキスはこのアルバムのギターサウンドに影響を受けたことを公言している。
















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