英国流タイトでドライブ感あふれるギターロックの巨星
80年代後半のイギリスのインディーロックシーン。
あのThe Smithsが解散し、彼らの跡を継ごうとするバンドThe House of Loveが出てきたり...
The Jesus and Mary ChainやMy Bloody Valentineなどシューゲイザーのバンドが出てきたり...
経済的不況とドラッグ文化の産物であるマッドチェスター(The Stone Roses・New Order・Happy Mondaysなど)
様々なロックシーンが生まれた最中、異彩を放つバンドがいた。
それが今回紹介するThe Wedding Present(ザ・ウェディング・プレゼント)!!
The Wedding Presentはイギリスの名門大学であるリーズ大学出身のインテリ”デイヴィッド・ルイス・ゲッジ”と彼の学友と共に結成されたバンド。
80年代のロックミュージシャンのほとんどは労働者階級が多いなかで、名門校出身者だけでバンドを組んだというのも当時としては珍しかった。
さらに異彩を放った理由というのが、シューゲイザーやマッドチェスターなどエフェクトをかけまくったギターサウンドが流行している中で”60~70年代さながらのハイテンポでストレートなガレージギターロック”をやっていたこと。
(あとボーカルのデイヴィッド・ルイス・ゲッジの歌声がモリッシー(The Smiths)にそっくり)
時代遅れ?
違う!時代を先取りしすぎた!!
2000年代になってようやくThe StrokesやThe Libertinesのようなガレージロックが再評価されるので、タイミングとしてはThe Wedding Presentは運の悪い時期にデビューしてしまった。
しかし全く売れなかったわけでない。
むしろ1989年初頭に発表された英音楽誌NME(New Musical Express)の読者人気投票では、世界的な人気バンドR.E.M.やU2などを抑えて堂々のNo.1に選出。
当時のトレンドから独立した存在であるのにもかかわらず、楽曲の完成度のみでイギリスでは人気ロックバンドの地位を築いていたのであった。
「もしThe Wedding Presentが2000年代にデビューしていたら...」と思わずにはいられない。
そんなThe Wedding Presentの楽曲・アルバムを紹介する。
おすすめ曲
My Favourite Dress
1stアルバム『George Best』、収録曲。
この頃からすでに硬質でタイトなギターカッティングという持ち味を持っていた!
しかしインディー時代にレコーディングしたこともあって、音は荒い...
ローファイな感じを楽しめる人もいるが、個人的にはこの手のギタープレイは一つ一つの音がはっきりと聞こえると心地よいので、良いレコーディング環境でこれを録音していたら...と考えてしまう。
2014年にNMEが選んだ「史上最高の500曲」で第328位に選ばれた。
Brassneck
2ndアルバム『Bizarro』、収録曲。
アルバムのトップを飾る曲であり、僕がこのバンドにハマるきっかけになった曲!!
初めて聴く方におすすめ!
疾走・焦燥・攻撃・衝動、これらの言葉がこの曲を聴いてうちのフラッシュバックするよう思い浮かべてしまう。
そして曲を聴き終わって、一言「ギターってカッコイイ!」と呟いてしまう。
ただ歌の内容は別れた(別れる予定?)彼女に対して「Brassneck(厚顔・鉄面皮)」と口汚く罵る女々しいもの。
UKシングルチャートで24位を記録する。
Kennedy
2ndアルバム『Bizarro』、収録曲。
ミドル~ハイテンポくらいのスピードでテリブル(高音)のギターカッティングフレーズを聞かせてくれるロックナンバー!
曲の内容は「Brassneck」とは対照的で、「失恋していても悲しむ暇もない、次に行かないと・・・」という前向きな姿勢を促すようなメッセージが見られる。
UKシングルチャートで33位を記録する。
Dalliance
3rdアルバム『Seamonsters』、収録曲。
この曲は叙情的なメロディを主体にした曲。
ギターのサウンドは硬質ではあるが、前半はかき鳴らすというよりもしっとり聞かせるようなプレイに徹しており、後半は怒号のストロークが炸裂するという内容!!
UKシングルチャートで29位を記録する。
Blue Eyes
コンピレーションアルバム『Hit Parade 1』、収録曲。
ハイテンポな硬質ギターリフをかき鳴らすことが武器であるThe Wedding Presentであるが、この曲はアルペジオ主体の美しいギターリフを味わえる!
The SmithsやSuedeのギタープレイを彷彿させる。
The Wedding Presentの底知れなさを感じる1曲だ。
UKシングルチャートで26位を記録する。
Sticky
コンピレーションアルバム『Hit Parade 2』、収録曲。
The Wedding Presentの中でもかなりポップで爽快感を感じさせるギターサウンドが特徴的!
PVもモノクロの無機質な部屋で真っ白の男(天使?)と悪魔が戦うというもの。
モンティ・パイソンのような雰囲気を感じる。
UKシングルチャートで17位を記録する。
おすすめアルバム
『George Best』(1stアルバム/1987年)
プレミア・リーグのマンチェスターユナイテッドの伝説的選手”ジョージ・ベスト”から名付けられたデビュー作!!
バンド自らが立ち上げたインディーレーベル”Reception Records”からリリースされたが、一気に商業チャートに載るヒットを記録した。
- Everyone Thinks He Looks Daft
- My Favourite Dress
- Give My Love to Kevin
- Anyone Can Make a Mistake
などキャッチーな曲が多い!
UKアルバムチャートで47位を記録。
NMEが発表した『史上最高のアルバム500枚』にて第489位にランクイン!!
英音楽誌MOJOが発表した「歴代最高のUKインディ・レコード TOP50」にて30位にランクイン。
『Bizarro』(2ndアルバム/1989年)
硬質で攻撃的、さらに華麗なギターサウンドでUKロックシーンに衝撃を与えた名盤!!
初めて聴く方におすすめのアルバム!
前作は世間的にも評価が高いアルバムであったが、フロントマンであるデイヴィッド・ルイス・ゲッジ自身は楽曲のレコーディング技術の面や歌詞の内容に不満を残していた。
また自身の声がモリッシー(The Smiths)にそっくりということもあり、とあるインタビューでは「俺たちはThe Smithsのファンが2番目に好きなバンド」と自虐していた。
しかしこのアルバムではメジャーレーベルであるRCAレコードの下で制作されたため、持ち味そのままでクオリティの高いレコーディングが行われた。
歌詞の内容は恋愛に関するものが多く、中には女々しい曲もあるが、どちらかと言えば前向きな歌詞の方が多い。
UKアルバムチャートで22位を記録。
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